2020年に読んだ小説の個人的ランキング、ベスト10冊をご紹介します。ネタバレなし。何かの参考になれば幸いです。
▼2020年の「小説以外」ベスト10の記事も書きました!

目次
1位:『逆ソクラテス』伊坂幸太郎
私の伊坂幸太郎作品制覇、人呼んで「霊峰“伊坂山”一人大登山」の道のりはこの一冊から始まりました。
『逆ソクラテス』。
なにしろ、タイトルが素敵過ぎませんか?気になり過ぎませんか?
伊坂幸太郎作品はそれまで完全に未読の「伊坂幸太郎童貞」でしたが、タイトルに秒で撃ち抜かれて手に取りました。
そしてTwitter上で最初に伊坂作品読むなら何でしょう?とつぶやいた所、親切な読書アカウントの皆様からなんと速攻で16作品も教えていただきました!恐るべきTwitter、恐るべき伊坂作品、そして恐るべき伊坂作品を愛する皆様の知識量!
『逆ソクラテス』が凄く気になっているのですが、伊坂幸太郎さんが未読です。まずはこれ!この順番がオススメ!と言うのがあれば、教えていただきたいですm(_ _)m#伊坂幸太郎 #読書好きな人と繋がりたい
— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) June 13, 2020
そして教えていただいたリストを眺めながら、
「…こりゃ、全部読まなきゃ嘘だわ」
と結論づけて、6月17日~10月14日の4ヶ月間をかけて42作品読み切りました。至福の時だった。こういうの、またやりたい。
肝心の『逆ソクラテス』の中身ですが、子どもが主役で大人の常識・固定観念に立ち向かうという話が詰まった短編集。一つ一つの話の面白さ、最終的な伏線回収、読みやすさ含めて最高でした。清々しく、また大人になった今だからこそ改めて勇気をもらえる内容(もちろん若いうちに呼んでも◎)で、万人におすすめできる一冊でした。
伊坂作品の最初として読んでもヨシ、最後に読んでもなおヨシ。
私みたいに偏屈に42作品の最後に据えて読まずとも、いきなり読んじゃってOKな良書です。
112冊目『逆ソクラテス』伊坂幸太郎
「敵は、先入観だよ」
家を離れ初めて向き合う小さな社会。
そこでは様々な価値観や決めつけが君を襲うだろう。
親は、子を護る。
子は、自分の気持ちを護れ。そして言うんだ。
「僕はそうは思わない」
世界なんて1つじゃない。
一泡吹かせてやれ。#読了 pic.twitter.com/DCi9VqtIq5— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) October 14, 2020
2位:『匣の中の失楽』竹本健治
ミステリの三大奇書と言えば、夢野久作『ドグラ・マグラ』、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、中井英夫『虚無への供物』です。
そして本作、竹本健治『匣の中の失楽』を加えて四大奇書と言うこともあります。
私は三大奇書を2020年に読み終えて、すぐさま本作に取り掛かりましたが、圧巻でした。
一言でいうと、鬼才竹本健治先生が弱冠22歳で三大奇書のバトンをしっかり受け取り、あろうことかデビュー作で第四の奇書として完成させてしまった…という、文字通り鬼のような一冊です。
- 『ドグラ・マグラ』における読後の目眩
- 『黒死館殺人事件』における衒学の雨嵐
- 『虚無への供物』における矢継ぎ早の推理合戦
- そして、すべてに共通するアンチミステリと構造的悪巧み
すべてのバトンを受取り、それぞれの奥義を完全に自分の技として昇華していく、戦慄を覚えるほどの鮮やかさ。22歳でですよ。オーパーツですよ…
三大奇書を読んでこそ、この四冊目が煌々と輝きます。ぜひトライして欲しい一冊です。
121冊目
『匣の中の失楽』竹本健治「君はどこにいるの」
「どこにもいないわ」
「じゃ、行こうか」胎内の如き黄色い闇で、
人形達が嘲笑う。
鬼か魔が出ては、
密室を異形に折畳む。いかにして、匣はつくられたか?
それは死者の辿る虚無。
或いは、
不連続線上に揺らぐカタストロフィ。#読了 pic.twitter.com/lsZI3OugKQ— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) November 15, 2020
3位:『Another2001』『Anoter エピソードS』『Anoter』綾辻行人
「それ」が始まってしまったら、もう逃げられない…
今年は「ある」年なのか、「ない」年なのか?「夜見山現象」にまつわる謎と悲劇と虚ろと…
ミステリ界の巨匠、綾辻行人先生のAnotherシリーズ(『Another』『Another エピソードS』『Another2001』)は2020年に一気に読みました。やはり面白かった。
2020年に最新刊『Another2001』が発刊されたことで、Twitterで「#Anotherなら死んでた」ハッシュタグキャンペーンが行われていましたが、もうつぶやきたくて仕方なかったですね。しこたまつぶやいたけど。
鈍器と称された『Another2001』の分厚さにはちょっと怯んでしまうと思いますが(804ページ)心配いりません。小難しいことは考えず、一気に読めてしまいますよ。
読み終わったら皆で叫ぼう、「Anotherなら死んでた」と!!
113冊目
『Another』綾辻行人「虚ろなものたちは、それを何かで埋めようとしたがる」
不可解で凄惨な死の連鎖。
呪いの学級、蔓延る死、虚ろな人形、碧眼の少女…死は悪意か?ただの現象か?
ただの現象なら、為す術はあるのか?「〈死者〉は、誰――?」
それは、まだ始まったばかりだ。#読了 pic.twitter.com/p2QgGSVRgT
— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) October 19, 2020
114冊目
『Another エピソードS』綾辻行人「見えるの?きみには、僕が」
自分の死体を探す、記憶喪失の幽霊。
死の色が見える、虚ろな碧眼の少女。沈殿する底の黒から遠く響く、声。
死んだら、みんなとつながれる。
或る夏。
消えてしまう前の。淡く儚い、誰も知らない哀しい冒険。#読了 pic.twitter.com/n6uvTAeuqf
— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) October 20, 2020
115冊目
『Another 2001』綾辻行人「みんな死んでしまう。死んでしまう。死んでしまう!」
どくん。
闇のストロボが焚かれた。
刹那、世界は暗転する。死のルールは絶対です。
クラス一丸となって頑張りましょう。今年は〈ある年〉です。
どくん。
〈夜見山現象〉史上、最凶の年。#読了 pic.twitter.com/mb40iVTmYe
— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) October 24, 2020
4位:『三体』『三体Ⅱ黒暗森林』劉慈欣
中華SF?それってどうなの?美味しいの?
そもそもSF作品をあまり読んだことが無かったので敬遠していたのですが、書店で見かけた際に、メタルギアソリッドシリーズの仕掛け人小島秀夫氏が帯にお薦めコメントを出していたのを見て即買い。即積み。…読み始めるまでにはちょっと時間かかりましたが、読み始めてからは惹き込まれました。
SFって、宇宙戦争するんでしょ?惑星が爆発するんでしょ?ダークサイドに堕ちて、父親と闘ったりするんでしょ?という幼稚な偏見は来週の燃えるゴミの日に全部出しちゃってください。
これ、ただの化け物SFでした。めちゃくちゃに面白い。
中国発ならではの要素もありますが、特に偏ったところもなく世界レヴェルの内容です。喜怒哀楽をガンガン刺激してくれるし、痺れる名言も沢山。読まなきゃ損ですね。読まなきゃ損。
三体シリーズは三部作で、完結編が2021年に翻訳されて出版されるはずなので、ひたすらに楽しみ。
124冊目『三体』劉慈欣
「宇宙の最後の秘密がすべて明かされたとき、人類はそれでも生存しつづけられるだろうか」
希望が枯渇した世界。
少女が見上げた漆黒。宇宙は、誰も裏切らない科学だ。
法則こそ一縷の望み。漆黒も無論、少女を見ていた。
何光年先の眼が?
それは自分で確かめろ。#読了 pic.twitter.com/KfsNEYlBb4— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) November 22, 2020
126冊目
『三体Ⅱ 黒暗森林』劉慈欣“わたしがおまえを滅ぼすとして、
それがおまえとなんの関係がある?”恒星の灯に照らされて、
一人ぼっちの惑星は踊る。暗黒の壇上で45億年。
孤独な円舞が続く。いつか友達が欲しいと願った。
遙か遠くにいるはずの。向こうはどう思ってるのかな。#読了 pic.twitter.com/L63jkFPcM7
— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) November 30, 2020
5位:『バトル・ロワイアル』高見広春
映画をかな~り昔に観ていただけで、本は読んでませんでした。
「The・人がバンバン死にまくる」一冊。
「皆さんにちょっと殺し合いしてもらいます」のビートたけしのイメージが強いと思いますが、本を読んでる時もそのイメージは最後まで払拭できませんでした(苦笑)。映画のインパクトは強すぎたな…
しかし、本の方が映画よりもさらに面白い。ビートたけしと藤原竜也のイメージを引きずっても無問題、一気読み出来ます。
非常に趣味の悪い本ではありますが、あくまで大人がエンタメとして読む分には、超がつくほどおすすめです。
127冊目『バトル・ロワイアル』高見広春
「今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをしてもらいます」
修学旅行は変更です。
国が決めました。42人、さぁ、散って!
…
友情?ザクッ
団結?ズドン
約束?グシャッ信じるって、そう、難しい
輝け、青春!
飛び散れ、脳漿!生き残れ、若者!#読了 pic.twitter.com/mvpIgpqhhC
— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) December 9, 2020
6位:『タイタン』野崎まど
でっかい。しろい。地球を感じる。
すべての仕事をAIが代替するようになった未来の世界で、故障したAI巨人を修理する女性の「仕事」の物語。
前述の通りSF初心者の目線なので深いコメントは出来ませんが、しこたまでっかいスケール感と、巨人との地球の散歩の描写に美を感じて圧倒されました。その壮大さと気持ちよさが、読んでいて快感でした。
映画化してほしいな。巨人と一緒に、巨大な地球を感じたい。
53冊目
野﨑まど『タイタン』AIが全て代替。仕事などとうに無くなった未来。ある女性に驚愕の「仕事」の依頼が。
それは「AIのカウンセリング」だった…
白く巨大で崇高、息を飲む展開。人間の生命が全て報われる、SFの神話。
極めて優美な描写に目眩…映画化熱望!その「仕事」を観たい!#読了 pic.twitter.com/98v3C3nU4q
— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) June 5, 2020
7位:『ペスト』アルベール・カミュ
新型コロナウイルスの感染拡大、緊急事態宣言発令、行動制限、緊張と緩み、政府と市民の意識のずれ、苦しむ者と笑う者…2020年はとにかくコロナ1色でしたね。2021年には収まって欲しいです。切に…
そんな今だからこそ、ドSなカミュの言葉を感じるタイミングでしょう。
極限状態で人は何を感じるのか。何を考え、どう行動すべきか。
きっと、正解はないんです。しかし、それぞれの明るい未来を描いて、流されずに歩んでいかなければいけません。そのための足がかりになるかも知れません。
…ならないかも知れません。カミュは、ドSです。
36冊目
カミュ『ペスト』「要するに、次第次第に町じゅうを満たしていった、はてしなくまた息苦しい足踏み」
感染症でロックダウンされた町。死の恐怖に瀕して闘う者達の十人十色。まさに今の状況と酷似…
今、何を考えどう行動するか?すべてに正解はない。カミュの予言は、なかなかドSだ。#読了 pic.twitter.com/BVnjM8KtE3
— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) April 12, 2020
8位:『午後の曳航』三島由紀夫
二部構成、戦慄必至。
青春の歪みがリアルに描かれる傑作です。『金閣寺』よりも個人的にはショックを受けました。
ページ数も短いし、三島由紀夫ビギナーにもお薦めじゃないでしょうか(私もビギナーですが)。言葉が力強く、美しい。そして人物描写が息苦しいほど躍動的。
「文学とはこうあるべきだ」と胸を張って言える一冊です。
そう言えば伊坂幸太郎『マリアビートル』に出てきた殺し屋・蜜柑も『午後の曳航』の一節を引用してました。
119冊目『午後の曳航』三島由紀夫
「血が必要なんだ!人間の血が!そうしなくちゃ、この空っぽの世界は蒼ざめて枯れ果ててしまうんだ」
世界の不整脈が、少年を震わす。
窒息しそうな恐怖。
成長とは、腐敗することか?海を見る。
許しうるべき、光る黒い蒼を。「あしたはお天気だろう」#読了 pic.twitter.com/838AGa2leO
— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) November 7, 2020
9位:『キネマの神様』原田マハ
アル中、ギャンブル狂のダメ親父が、映画によって救われる奇跡の物語。
登場人物達の暖かさと真摯な姿に、原田マハ作品は初めてでしたが、素直に感動しました。
コロナの影響で残念ながら帰らぬ人となった志村けんさんが主演で映画化するはずだった作品です。とても悔しい。そう言った意味でも2020年のベストにランクインさせたかった。
映画好きなら反応する仕掛けが沢山。でも映画に詳しくなくても十分楽しめます。私はどっちかというと後者ですね。
42冊目
原田マハ『キネマの神様』
英題「The Name above the Title」ギャンブル中毒で映画好きの駄目親父。“映画の神様”が家族に仕掛けた奇跡に涙。もっと早く読めば良かった。
志村けんさんが本当に英題通りの存在になった事が悔しい。早くこの状況を脱して、また大切な人と映画館へ行くぞ!#読了 pic.twitter.com/dXk2kbjlyf
— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) April 25, 2020
10位:『ノルウェイの森』村上春樹
私は本を人にオススメされると「あの人はどこで面白いと思ったのかな?」と考えながら読むのですが、この本は歴代でも指折りなほど、多くの人にオススメされた本です。
だから、オススメしてくれた大勢の生霊が背後霊としてびっしり張り付いてくれた一冊となりました。うらめしや。
「生と性と死」そして「責任」がテーマの一冊。
「読み手の感情を入れる器としての精度」が非常に高く、「純粋な気持ちと極端な行動の危うい両立」が魅力的な名作だなと感じました。名言もゴロゴロ。
個人的に一つ言えることは、キズキかわいそう。緑大っ嫌い。ピース。
131冊目『ノルウェイの森』村上春樹
「生のまっただ中で、何もかもが死を中心にして回転していたのだ」
変形し続ける孤独な磁石。
歪な二つの極と極が
奇跡的に重なった。夜、樹海で地場が狂う。
二つは音も無く反発し
永劫の彼方へ弾け飛んだ。哀しい浮遊。
あの磁力を心に宿して。#読了 pic.twitter.com/dJcYOOjtPf
— うまいごす@本と音の怪 (@umaigos) December 16, 2020
おわりに
ということで、2020年に読んだ小説ベスト10いかがだったでしょうか。
適当なことを言いつつも、何かの参考になれば嬉しいです。読み終えた人、語りましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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