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道尾秀介『いけない』(後半ネタバレあり)写真の意味の考察・真相、あらすじ・感想|最後の1ページで物語が一変する体験型ミステリ第1弾。

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道尾秀介『いけない』(いけない1)

各章の最後に提示される「1枚の写真」で、物語が一変する…という「意味がわかると怖い話」に写真を組み込んだ、王様のブランチを始め様々なメディアで紹介されて話題を読んだ画期的な〈体験型ミステリ〉第1弾。その仕掛けに気づいた時、鳥肌が立つことでしょう。

2022年8月に文庫化。続編『いけないⅡ』も2022年9月に発刊されてますます注目の本作、ぜひ読んでおきたい一冊です。

【注意】後半にネタバレあります

この記事では、後半に作品のネタバレがあります。

ネタバレが始まる所でもう一度合図するので、未読の方はご注意くださいね!

まだ大丈夫です

作品名:道尾秀介『いけない』(いけない1)
発売日2019/7/10(文藝春秋)・2022/8/3(文春文庫)
シリーズ:いけないシリーズ(『いけない』『いけないⅡ(いけない2)』)

著:道尾 秀介
¥710 (2024/10/27 21:35時点 | Amazon調べ)

第2弾『いけないⅡ』(いけない2)の写真の意味についても考察記事を書きました。こちらもぜひ!

目次

道尾秀介『いけない』(いけない1)の目次・あらすじ

道尾秀介『いけない』(いけない1)の目次

  • 第一章 弓投げの崖を見てはいけない
  • 第二章 その話を聞かせてはいけない
  • 第三章 絵の謎に気づいてはいけない
  • 第四章 街の平和を信じてはいけない

道尾秀介『いけない』(いけない1)のあらすじ

↓公式サイト「文藝春秋BOOKS」より。

騙されては、いけない。けれど絶対、あなたも騙される。

『向日葵の咲かない夏』の原点に回帰しつつ、驚愕度・完成度を大幅更新する衝撃のミステリー!

第1章「弓投げの崖を見てはいけない」
自殺の名所付近のトンネルで起きた交通事故が、殺人の連鎖を招く。
第2章その話を聞かせてはいけない」
友達のいない少年が目撃した殺人現場は本物か? 偽物か?
第3章「絵の謎に気づいてはいけない」
宗教団体の幹部女性が死体で発見された。先輩刑事は後輩を導き捜査を進めるが。

どの章にも、最後の1ページを捲ると物語ががらりと変貌するトリックが……!
ラストページの後に再読すると物語に隠された〝本当の真相〟が浮かび上がる超絶技巧。
さらに終章「街の平和を信じてはいけない」を読み終えると、これまでの物語すべてがが絡み合い、さらなる〝真実〟に辿り着く大仕掛けが待ち受ける。

「ここ分かった!?」と読み終えたら感想戦したくなること必至の、体験型ミステリー小説。

「文藝春秋BOOKS」より

道尾秀介『いけない』(いけない1)読了時ツイート

道尾秀介『いけない』(いけない1)はこんな人にオススメ

  • リドルストーリー(結末を明示しないで終わる話)が好き!
  • 終盤であっと驚く体験がしたい!
  • 新しい読書体験がしたい
  • 怖い話、ホラー、ミステリが好き!
  • 自分で推理したい!
  • 黒い道尾秀介が好き!

ラストの謎が解けた時、どんな感情が渦巻くか?多分人によるんじゃないかなと思います。

精読してしっかり読む人は割りと簡単に気づけるかも知れませんが、普通に流し読みしていると、このエグいしかけにはきちんと気がつくことが出来ないかもしれない。誰もがスッキリ!となる訳ではない謎レベル中の上という感じの一冊です。

この記事では後半に、ネタバレ全開でその謎も紐解いていきますので、ご安心ください。

内容はややダークです。そういうのが苦手な方や、感動系が好き!とか青春恋愛小説が読みたいっ!という方にはオススメできません。が、表紙とタイトルで手に取らないでしょう。

いや怖いっしょ

で、そういう方はカバーを外すこともないでしょうから、中の装丁もお見せしますね。いや怖いっしょ。

いや怖いっしょ

道尾秀介『いけない』(いけない1)の面白さは、謎が解けた時の快感、そして再読時の気持ちの入り方の違いにある!

それぞれの短篇、どれも楽しめると思いますが、連作短編になっているので一冊続けて読むべきです。

そして、それぞれのラストで「すべてが、反転。」する仕組みに全力が注がれているので、物語全編を通じて、どこか引っかかるような表現がたらふく出てきます。

引っ掛けてやるぞ…引っ掛けてやるぞ…

という怨念の様なオーラが文章にまとわりついている感覚がありますね。「何かある」という事が予め分かった状態で読んでいるからなのかもしれませんが。全編読者への挑戦状みたいな感じがあります笑

まぁそこまで肩に力を入れなくても楽しく読めるので、お薦めの一冊です!

読んでもわからなかった人は、下のネタバレ考察をお読みください!

おわりに:作品名を曖昧に変換

『いけたらいく』

いや絶対来ないっしょ

作品名:道尾秀介『いけない』(いけない1)
発売日2019/7/10(文藝春秋)・2022/8/3(文春文庫)
シリーズ:いけないシリーズ(『いけない』『いけないⅡ(いけない2)』)

著:道尾 秀介
¥710 (2024/10/27 21:35時点 | Amazon調べ)
【注意】ここからネタバレします

ここからネタバレしていくので、未読の方は、どうぞお引取りくださいね!

引き返せ…

【ネタバレあり】道尾秀介『いけない』(『いけない1』)各話の登場人物の整理と最後の写真の意味の考察

既読の方向けの考察になるので、物語の細かい解説まではしません。解釈は個人的なものなので間違ってたらゴメンナサイ。もっと詳しい人、何かツッコミあったら教えてください!

「第一章 弓投げの崖を見てはいけない」登場人物

◎安見邦夫 大学卒業後保育士 蝦蟇倉保育園歴10年、白沢保育園歴10年
◎安見弓子 邦夫の妻
◎森野浩之(ヒロ) マサの弟 戻って崖をみようといった若者
◎森野雅也(マサ) 4月5日助手席に乗っていた男
◎梶原尚人(ナオト) 竹箒の様に立てた金髪、白い頬、三文字の名前
◎宮下志穂 十王還命会 奉仕部
◎隈島 刑事 剛毛「クマの手」
◎竹梨 後輩刑事 37歳
◎代田 鑑識官 50になったばかり 真っ白白髪 老人と思われる
◎吉住 奉仕部の部下

「第一章 弓投げの崖を見てはいけない」最後の写真の意味の考察

◎最後の写真
・隈島がメモしたゆかり荘の位置が書かれたマップ
→最後の自動車事故での位置関係がわかる

→誰が撥ねられて死んだのか?
ヒント1.それぞれが手に握っていたもの
・邦夫:矢
・雅也:包丁
・隈島:ラークの箱
→ヒント1から、撥ねられたのは、邦夫か雅也か隈島の3人に絞られる

ヒント2.車の「フロントガラスの右側」から出てきた人影
・邦夫はゆかり荘から出てきたから左側
・雅也と隈島は商店街方面から出てきたから右側
→フロントガラスの左側から現れたはずの邦夫は除外されるので、ヒント2から、撥ねられたのは雅也か隈島の2人に絞られる

ヒント3.手に握っていたものが「音もなく落ちた」
・音もなく落ちるのは軽いものなので、雅也が持っていた包丁ではありえない。よって落ちたのは「ラークの箱」だとわかる。
→ヒント3から、結局撥ねられたのは隈島だとわかる。

「第二章 その話を聞かせてはいけない」登場人物

◎馬珂(マーカー) 主人公
◎珂の両親 「好再徠(こうさいらい)」経営
◎山内 珂の友達?
◎峯田さん 店の共同経営者
◎コーキ 幼稚園時代の友達
◎おばあさん
◎おばあさんの甥
◎おばあさんの旦那

「第二章 その話を聞かせてはいけない」最後の写真の意味の考察

◎最後の写真
・テレビのインタビューのワンシーンを録画した所を撮ったもの
・18:09
・「河原で発見の遺体 妻と親族は…」
・茶色い革のジャンパーの男と、おばあさん
左後ろに、白いバンに子供の影(頭は見えない)
→第二章のラストで、おばあさんと甥が崖から落とされる描写とこの写真を合わせると、車に潜んでいた山内が現れて助けてくれたことを暗示している

さらに、「終章 街の平和を信じてはいけない」で再登場する珂と山内らしき少年が、いつもどんなことをして遊んでいるのかと邦夫に聞かれた時、「かくれんぼ」「車の中とか?」「約束を守るためなら、どこでも」「そのおかげで、僕いまここにいられるんだもんね」と答える。これはこのことを暗示している。

「第三章 絵の謎に気づいてはいけない」登場人物

◎竹梨 隈島とはコンビを解消、今は新米の水元と行動
◎代田 シロさん 髪が白い いつも白衣 鑑識長
◎水元 新米刑事
◎宮下志穂 十王還命会幹部 奉仕部 37歳
◎守谷巧 十王還命会 蝦蟇倉支部支部長 58歳
◎中川徹 クレホームズ代表取締役社長 35歳 キツネ目
◎絹川 検視官
◎守谷の妻 総務部的働きをしている

「第三章 絵の謎に気づいてはいけない」最後の写真の意味の考察

◎最後の写真
・手帳のメモの絵
・電話中に外した?の絵にドアノブの上に人がいなくて、四角いものに矢印がついている
・白い手袋を持った手が、ペンで何かを書こうとしている写真

→作中で見つかった証拠品の中川の手帳に、誰かが手を加えて証拠を隠滅しようとした。誰が?

→白い手袋を持った手が持っているペンは高級ボールペンのモンブラン。竹梨の所持品

→よって、十王還命会の信者であることを隠している竹梨が、守谷が犯した殺人の証拠を隠滅するために手帳に細工をしたことがわかる。

竹梨のコンビである後輩の水元が、「代田が十王還命会の信者で、手帳の証拠を隠滅したのではないか」というギリギリの真実に気づき、その事を口にしたので、竹梨は水元をベランダから落として殺した。控えめに言って最悪な先輩である。

「第四章 街の平和を信じてはいけない」登場人物

◎安見邦夫
◎ケロイドの少年 山内
◎もう一人の少年 珂
◎竹梨

「第四章 街の平和を信じてはいけない」最後の写真の意味の考察

◎最後の写真
・封筒から取り出された5枚の便箋
・すべて「白紙」

邦夫が全ての事件を告白して弓子に書かせた手紙は、実は何も書かれていなかった。弓子はそこまでしてでも、邦夫は悪くない、と夫である邦夫を守りたかった

→邦夫が真実を告白した白紙の手紙は竹梨の手に。竹梨が事件の全てを語った(自分が事件の証拠を隠滅してきたこと)手紙は、邦夫が自分のものと勘違いして抜き取り、破り捨てた。

弓子の夫への愛情が、山内と珂の友情と邦夫への感謝の言葉が、竹梨の罪の意識はそのままに心の牢獄に閉じ込めたまま、街はこれからも平和が保たれる。という、なんともいえない感覚で幕を閉じる物語でした。

というのが私の解釈です。違ったらゴメンナサイ。最後までお付き合いいただきありがとうございました!

第2弾『いけないⅡ』(いけない2)の写真の意味についても考察記事を書きました。こちらもぜひ!

本に関するYouTubeもやっているので、ぜひ御覧ください!

  • 本の事について話すYouTubeやってます。良かったら覗いて行ってくださいね!

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