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〈ガチ採点①〉川上未映子『黄色い家』|2024年本屋大賞ノミネート作品全部読んでネタバレなしで紹介!

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川上未映子『黄色い家』をネタバレ無し、6つの指標でガチ採点!

自分が書店員なら、こうやって本屋大賞ノミネート作品を売りたい!

「本屋大戦2024」!!

2024年本屋大賞のノミネート10作品を一作ずつ読み、忖度なしで、できるだけ客観的に採点していきます。

作品名:『黄色い家』
著者名:川上未映子
発売日2023/2/20(中央公論新社)
シリーズ:ノンシリーズ
受賞等:『このミステリーがすごい!2024年版』5位、『週刊文春ミステリーベスト10 2023』5位、『ミステリが読みたい!2024年版』6位

著:川上未映子
¥2,000 (2024/10/08 12:03時点 | Amazon調べ)
目次

ガチ採点企画「本屋大戦」趣旨とルール説明

こんにちは。積読ダイエットをやめた直後からGOTSU-GOTSU本が増えまくっているうまいごすです。

私は書店員ではありませんが、本が大好きです。

本屋大賞は「書店員がいちばん売りたい本」を決める企画、ですよね。

羨ましい事この上ない…本を大好きな気持ちに、差はないだろう!ということで、自分が書店員だと仮定して本屋大賞ノミネート作品のランキングを勝手に決めてやる!という企画を始めます。

勝手に採点すると言っても、主観的に点数を決めるだけだと面白くないので、

5つの客観的な指標+1つの超主観的な指標

をもとに採点します。それぞれの指標はこちら。

  • 万人にオススメ度
  • 入口にも最適度
  • コア層も満足度
  • 皆で語りたい度
  • 時代ピッタリ度
  • 俺が布教する度

なお、独自のランキングを決める企画であって「本屋大賞の順位予想」ではありません。既に10作すべて読み終えて自分の中でランキングは決まっていますが、これと実際のランキングは連動しないと思います。

いや、むしろ確実に連動しないでしょう。

全国の書店員さんの投票ではなく、私という一人の妄想書店員の勝手ランキングですので、ご了承下さい。

それでも納得性は高いものにできればいいなと思います。

今回のノミネート作品は下記の10作品。どの作品が大賞を取るのでしょうか?楽しみですね!

  • 川上未映子『黄色い家』
  • 小川哲『君が手にするはずだった黄金について』
  • 津村記久子『水車小屋のネネ』
  • 夏川草介『スピノザの診察室』
  • 塩田武士『存在のすべてを』
  • 宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』
  • 知念実希人『放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件』
  • 凪良ゆう『星を編む』
  • 青山美智子『リカバリー・カバヒコ』
  • 多崎礼『レーエンデ国物語』

ネタバレは極力控えて、未読の方でも「この本を読みたい!」あるいは「この本はまぁいいや!」と感じてもらえるような忖度のない紹介にできればいいなと考えています。

YouTubeチャンネルの方でもしっかり解説しているので、よろしければぜひこちらも御覧ください!

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川上未映子『黄色い家』紹介と感想

川上未映子『黄色い家』あらすじ

2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶――黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな〝シノギ〞に手を出すことになる。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい……。

公式サイトより

ということで、圧巻。読んでる最中のズキズキ胸にくるダメージ。めくるページが止まらなくなるジェットコースターな闇展開。読み終えた後にため息とともにしばらく身動きが取れなくなるような重く複雑な読後感。マジで圧巻です。

個人的には、私が2023年に読んだ150冊の本の中で1位でした。良かった!とか面白かった!とかいう感想ではなく、「凄まじかった」の一言に尽きる一冊です。

私は川上未映子作品は、すべまよこと「すべて真夜中の恋人たち」の一冊しか読んだことがなかったのですが、他の作品も読まねば!しまった!という気持ちになりました。

「すべて真夜中の恋人たち」も、ただ甘酸っぱい、みたいな単純な感想では終わらない、繊細で儚い、不器用で真摯な大人の恋愛を描いた作品。静かで、真夜中で、淡い光があって、人間の心の成長が描かれていて、お酒も飲みたくなる。これももう語りだしたら止まらないのですが最高に面白い小説です。爆笑問題の太田光さんが絶賛している帯が印象的でした。読みやすくて超絶に心打たれる傑作なので、これもぜひ手にとってみて欲しい一冊です。

圧巻のノワール小説

本作『黄色い家』は、『すべて真夜中の恋人たち』のような恋愛小説では一切ありません。さらにいうと、あまり川上作品を読み込めていないど素人の勝手なイメージとしては、どちらかというと川上未映子作品というとややシニカルな純文学よりの作風のイメージがありますが、本作はまったく趣向が異なり、スリリングな展開が読者を戦慄させる「クライム・サスペンス」。ノワール小説と言ってもよいでしょう。

テーマとして「貧困」と「裏社会」が組み込まれています。主人公の少女が犯罪行為に手を染めていく、染めざるを得ない境遇の不条理さとやるせなさ、そこからどんどん深みにハマっていくおそろしさ、そしてそれでも希望の光を諦めない少女の強さと脆さ、仲間とはなにか、家族とはなにか、平等とはなにか、幸せとはなにか…あらゆる重いものをグルングルンにまるめてできた球を剛速球でぶつけられ、読者の心を複雑骨折させてくれる一冊です。

どうしようもないんですよね。しかし、共感もするけど嫌悪感もあり、応援したいけどそうじゃねぇだろうという気持ちもあり、つらい感情のままどんどんページをめくっていきました。気づけばズシンとくるラストに打ちのめされていました。

川上未映子『黄色い家』はいかにして出来上がったのか?

なぜこの様な作品ができあがったのか、著者の川上未映子さんの経歴ですが、高校卒業後に弟さんを大学にいれるため、家計を支えるために昼間は本屋でアルバイト、夜は北新地のクラブでホステス、それから書店員や歯科助手と、様々な仕事をされたそうです。

そして2002年に川上三枝子名義で歌手としてデビュー。2006年にエッセイの『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』を出版、2007年に『わたくし率 イン 歯ー、または世界』でデビューしました。2008年に『乳と卵』で芥川賞を受賞。

2006年に所属レコード会社のビクターエンタテインメントの元担当者さんと結婚したあと、2010年に離婚され、2011年に作家の阿部和重さんと再婚されました。

川上さんのXもフォローしていますが、発言にも芯があり、ワタシ的には生き方が非常にロックでかっこいい女性作家さんであると思っています。その裏側には、川上未映子さんという人間を形成した人生の大きなイベントごとや戦いや喜怒哀楽があったのだと思います。

そんな川上さんの様々な思いや人生の煮っころがしのような集大成な作品が『黄色い家』という傑作を作り上げたのではないでしょうか。

「貧困」と「裏社会」というテーマを、川上未映子という「文学」と「人間」のフィルターを通すことで出来上がった、素晴らしい物語です。

ページ数の多さを感じさせない勢いのある作品なので、ぜひ!読んで頂きたいです。

川上未映子『黄色い家』ガチ採点&解説

それではいよいよ、本屋大戦2024の採点に参ります。

川上未映子『黄色い家』の点数は…

・🤗万人にオススメ度:6点

・🔰入口にも最適度:4点

・💪コア層も満足度:8点

・🗣️皆で語りたい度:8点

・🆕時代ぴったり度:9点

・🤠俺が布教する度:7点

✨合計推し点数(60点満点):42点✨

と、言うことで気になる順位は……なんと……1位です!(M-1のお決まり風)
『黄色い家』は暫定ボックスの1位の席に移動していただきます!

2023年個人的なベスト1の一冊にしては、意外と点数が低くなったなーという感じですが解説していきます。

この企画では6つの採点の指標を用意していますが、完全に主観的な評価軸は「俺が布教する度」のみです。あとは、自分が書店員だとして、それぞれの観点から客観的に採点していきます。その方がある程度納得性が高いんじゃないかという趣向です。

川上未映子『黄色い家』万人にオススメ度:6点

まず「万人にオススメ度」ですが、これはもう説明不要で「老若男女」どんな人にもおすすめできる!まさに万人におすすめ!という項目です。

『黄色い家』はハッキリ言ってめちゃくちゃ刺さる、というか心の衝撃度が半端ない本格的な作品ではあるのですが、しっかり読むとダメージを受けることは請け合いだし、テーマも「貧困」「裏社会」「犯罪」を取り扱ったノワール小説なので、万人にお薦めしたいか?というとそこは少しクエスチョンマークです。

書店に老若男女色んな方が来ますよね。自分が書店員だとして、もちろん最初にそれぞれの方の趣味嗜好を聞いた上でお薦めをするわけですが、おそらく第一候補に『黄色い家』が上がってくるケースはそこまで多くないんじゃなかろうか、と考えて、『黄色い家』の「万人にお薦め度」は6点としました。

「読みやすくてダメージ受ける作品ないですか?」と聞かれたらコレどうぞ!とは答えたいですね。

川上未映子『黄色い家』入口にも最適度:4点

次に「入口にも最適度」です。これはどういうことかと言うと大まかに3つのポイントを想定しています。
・文章が読みやすいかどうか
・これから本を読み始めたいという人に「読書」の楽しさを知ってもらうための一冊目として最適かどうか
・その作家さんの作品の入門編としても良いかどうか
というような、最初に読む本としての適正という点で採点をします。

『黄色い家』では、文章の読みやすさは光っているので良いのですが、やはりテーマが重いのが1点。そしてこれは結構重要だけど読書好きに取ってはそこまで重要ではない点として、単行本で608ページという分厚さ。

これは読書好きの人は怒るかもしれないんですが、これから本を読み始めたい!という方に対して、これがおすすめじゃーい!ドスーン!と目の前にこれを置かれたら、「いや…分厚くね?」「そりゃあんたは本好きかもしれないけどいきなりこれを読み切れる自信ないっス…」となると思うんですよね。チャート式の数学Ⅰ+Aの黄色位分厚いですからね。読書初めての人に真っ先に京極夏彦の本をお薦めしませんよね?そりゃもちろん面白いんだけど…やっぱり抵抗感あると思うんですよ。

ただ、分厚くてもハリーポッターの様に明るいテーマで世界に入り込めるよ!という事ならありなケースもあるかとは思うので、一概に分厚いからだめよ、というつもりではないんですが、そういう意味で、『黄色い家』の「入口にも最適度」は4点としました。

川上未映子『黄色い家』コア層も満足度:8点

続いて「コア層も満足度」。こちらで重視しているポイントは3つです。
・濃厚な読書体験ができるかどうか
・読書好きな人も唸る本格的な作品かどうか
・その作家さんが好きな人も満足できるかどうか
先程の「入口にも最適度」と真逆とまでは言わないものの、読書好きで色々と読んでいる人にもおすすめなんじゃないかなと思える作品という観点から採点しています。

『黄色い家』はバッチリ濃厚な読書体験ができる一冊なので、このポイントはやっぱり高めになりますね。そして川上未映子さんの作品が好きな人でも満足が行く一冊になっていると思います。

ただ!心のダメージもデカいし、色々と読みながら悶えるシーンもあるんですが、もうこれは読んでみて感想をほしい所なんですが、惜しくも満点とはいかず、『黄色い家』の「コア層も満足度」は限りなく9点に近い8点、という感じです!

川上未映子『黄色い家』皆で語りたい度:8点

続いて「皆で語りたい度」。こちらで重視しているポイントは、この作品で読書会をやったら盛り上がるかどうか、作品中の言葉や登場人物の行動など、気になったり引っ掛かったりできる要素があるかどうか、読み終えた後、ネタバレサイトを見たくなるかどうか
というような、単純に作品について語りたくなる要素がどれだけ詰め込まれているかを軸に採点しています。

『黄色い家』は、もう語りたい要素だらけなんじゃないでしょうか。主人公・花の行動や言動だけでなく、それぞれの登場人物についての気になる点や、物語に感情移入できたかどうか、肯定派か否定派か、随所に差し込まれる時代を象徴するモチーフについてや、何より気になるラストの解釈…たらふくあるのではないかと思います。

読書会をやったとしたら、色んな切り口で語り合えるでしょうね。ということで『黄色い家』の「皆で語りたい度」も9点に近い8点です。

川上未映子『黄色い家』時代ピッタリ度:9点

お次は「時代ぴったり度」。こちらで見ていくポイントは、2024年、まさに今読むべき一冊と言えるかどうか。時代を語れる要素が作品の中に含まれているかどうか。という、他の項目と比べるとやや曖昧な軸ではあるんですが、時代にぴったりと言える作品とは何かを考えながら採点していきたい項目です。

『黄色い家』については文句なしに、時代の闇を語る一冊になっているので高得点になるでしょう。そして先程も触れましたが、作品内にその時代背景が分かるような流行歌などのモチーフが結構たくさん登場するので、そのあたりの共感度もかなり高いと言えます。ということで、『黄色い家』の「時代ぴったり度」は9点とさせていただきました。

川上未映子『黄色い家』俺が布教する度:7点

最後に「俺が布教する度」です。こちらのポイントはただ一つ!俺が書店員だとして、個人的に布教したいかどうか!それだけ。超主観的な項目となっております。

『黄色い家』は最初に言った通り私の2023年ベスト本なので、もうお薦めしたい気持ちは満々に溢れちゃうんですが、テーマの重さゆえ、個人的にと考えたとしても誰彼かまわずお薦めします!という感じにはならない気がするんですね。人を見てここぞ!というタイミングで布教したい本になります。

でも自分が書店員だとしたら、もうしっかり専用のコーナーを作って、念入りにポップを作って、販売に力を入れたい作品だと思います。なので、『黄色い家』の「俺が布教する度」は7点という感じになります。この本が好き=この本を売りたいに直結しないところが本企画の趣旨っぽいなと思います。

以上、それぞれの点数を合計した結果が44点という形になりました!

さぁ、2024年本屋大賞ノミネート作品は残す所9冊!一体誰が本屋大戦2024のグランプリとなるのか?

次回の対戦者は、青山美智子・著『リカバリー・カバヒコ』です!

YouTubeの方では結構頑張って番組風に編集したので、チャンネル登録、高評価ボタンを押していただき、次回の大戦に備えていただければ嬉しいです!最後まで見ていただきありがとうございました!

↓YouTubeはこちら

〈ガチ採点①〉川上未映子『黄色い家』ネタバレなしで2024年本屋大賞ノミネート作品全部読んで紹介

作品名:『黄色い家』
著者名:川上未映子
発売日2023/2/20(中央公論新社)
シリーズ:ノンシリーズ
受賞等:『このミステリーがすごい!2024年版』5位、『週刊文春ミステリーベスト10 2023』5位、『ミステリが読みたい!2024年版』6位

著:川上未映子
¥2,000 (2024/10/08 12:03時点 | Amazon調べ)

本に関するYouTubeもやっているので、ぜひ御覧ください!

  • 本の事について話すYouTubeやってます。良かったら覗いて行ってくださいね!

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