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森見登美彦『四畳半神話大系』非ネタバレ解説・感想|傑作。腐れ大学生路線続投で確立した「愛される」森見文学。

『四畳半神話大系』森見登美彦

デビュー作の『太陽の塔』でやり切ったかに見えた「腐れ大学生」路線の作品を2作品目も投入。しかしこれが傑作にして、時を超えて愛される森見文学の地位を確立した記念碑的作品。2010年には『ノイタミナ』でテレビアニメ化。森見作品をすべて読了した結果偏った主観を交えて『四畳半神話大系』をご紹介します。これから読む人のために、ネタバレはしません。
(森見本全冊レビュー、2冊目)

『四畳半神話大系』森見登美彦

文庫:405ページ

角川書店 (2008/3/25)

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▼森見登美彦全冊レビューへ向けて1作目『太陽の塔』

森見登美彦『太陽の塔』感想と解説|デビュー作にして森見妄想青春文学の完成品

森見登美彦『四畳半神話大系』あらすじ

私は冴えない大学3回生。バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。悪友の小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、なかなかお近づきになれない。いっそのこと、ぴかぴかの1回生に戻って大学生活をやり直したい!さ迷い込んだ4つの並行世界で繰り広げられる、滅法おかしくて、ちょっぴりほろ苦い青春ストーリー。 (「BOOK」データベースより)

主人公は名前無しの「私」。さぁどうぞ感情移入していってください。

 

森見登美彦『四畳半神話大系』読了ツイート

森見登美彦『四畳半神話大系』が前作『太陽の塔』と同じ作風になった理由

作風、世界観は処女作かつ傑作の『太陽の塔』と同じ「腐れ大学生」モノ。主人公である私が、悶々とした大学生生活を送る中で出逢う奇矯な面々と繰り広げる〈誇大〉妄想ジュブナイル小説。

なぜ2作品連続で「腐れ大学生」モノにしたかは、森見登美彦本人も「連続で同じテイストの小説を書いてたら、同じことしかできないヤツと思われるのでは…」という気持ちから、当初は違うジャンルの作品にしようとしていたそう。

しかし、ある編集者に「あなたのデビュー作をどれだけの人が読んでると思ってるんですか?むしろもっとこの路線で行けるところまで突っ走ることで、森見登美彦ココにあり!と知らしめることができるのですよ!」と説得されて書いたと言う。

図らずもそれが功を奏して、大傑作が生まれてしまったと言うことらしい。良かった。正解者(当時の編集者)に拍手!!よくできました!!よくできました!!

とにっかく大好きな作品です!この路線でまずは突っ走ってくれて良かった!本当にありがとうございます。

森見登美彦『四畳半神話大系』を最高に面白くしている「並行世界」の世界観

とはいえ、森見登美彦は同じ路線で書くとしても何か一工夫できないかと考えた。『四畳半神話大系』は、その産物である「並行世界」モノの作品となっている。

森見登美彦『四畳半神話大系』の目次

  • 第一話 四畳半恋ノ邪魔者
  • 第二話 四畳半自虐的代理代理戦争
  • 第三話 四畳半の甘い生活
  • 最終話 八十日間四畳半一周

 

四部構成のそれぞれは、四畳半という抜け出すことのできない青春の矮小なモラトリアム世界の中をもがきながら前進する私の「可能性」を示している。と勝手に推測。

「青春」という文字をどう読むか?

勿論それは人それぞれだけど、私は敢えて「悶々」と読みたい。モンモンと。

性的な悶々だけでなく、自らの小ささと世界の大きさ。時間という油断すると無限にありそうに感じる有限の魔物。既に先に立派になってしまった同世代への嫉妬、居直り。何か妙に邪魔してくる嫌な奴の存在…これら全てを孕んだ悶々が詰まった四畳半のゆりかごに揺られる「私」の孤軍奮闘ぶりには、誰もが共感を覚えることだろう。

 

森見登美彦『四畳半神話大系』を大成功たらしめた魅力的なキャラクターの存在

『四畳半神話大系』には、等身大で偏屈な主人公の「私」だけでなく、多彩で個性的で魅力あふれるキャラクター達が所狭しと大暴れする。

小津
「私」と同学年の腐れ縁。不気味な容姿で人の不幸は蜜の味。とにかく皆を不幸に陥れるための努力を惜しまない、何でもできるスゴいヤツ。不愉快だが憎めない。(「裏ガチャピン」だと勝手に思ってます)

明石さん
本作のヒロインであり「私」の後輩。冷静沈着で何かと「私」の危機を救ってくれたり、彼女なりの愛想を振りまいてくれる。蛾が超苦手。「もちぐま」なるグニグニしたぬいぐるみを持っている。かわいい。

師匠
「私」が住む下鴨幽水荘の上の部屋に住む、何歳かわからない男。家賃を踏み倒し、皆に適当な知恵を授け、羽貫さんと良い仲で、全てを知っていそうで何も知っていないのかも知れない謎の人物。愉快。

羽貫さん
酔うと人の顔を舐めたがる。美人。師匠と良い仲。なんか色々知ってるっぽい。

謎の老婆(占い師)
いつも「私」の前に現れては、道を示してくれるっぽいことを言うけどそうでもなく、毎回一つのキーワードだけは教えてくれる変な人。しっかりお金は取る。

ジョニー
「私」の欲望の脳内での姿。脳と会話して理性を保とうと頑張る。

イケメンなんだけどアレな趣味を持つ城ヶ崎さん、そしてその相方?の香織さんカステラ蛾の大群

まだまだ沢山のキャラクター達に魅了されながら、並行世界のグダグダを楽しむ。ほんと読んでて楽しい作品です。

これだけのキャラクターが、アニメでもイメージぴったりで再現されています。アニメ化しやすいキャラかもしれないけど、ここまで愛を持って映像化されると、たまらん!!!!と誰しも思うはずです。

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どのキャラも良い味出しているので、ぜひとも読んで欲しい。観て欲しい!

森見登美彦『四畳半神話大系』の名言・迷言・好きなフレーズ

既読の方は、それぞれのシーンを思い出しながら読んでみてください。

ひょっとすると十年前に生き別れた兄かと考えたが、兄とは生き別れていないし、そもそも私には兄はいない。
私は神々に対する怒りで震えた。もっとほかにすることはないのか。
「世間を気にして、自分の信念を折り曲げるんですか?僕が身も心も委ねたのは、そんなひとじゃありませんね」小津
「現実」という刃が一閃したとき、私の愚かしくも短い薔薇色の夢は大学構内の露と消えた。
 その後、私は冷厳な眼で現実を直視し、軽佻浮薄な夢に浮かれる者たちに鉄槌を下す決意を固めた。ありていに言えば、他人の恋路を邪魔することにした。
 東に恋する乙女がいれば「あんな変態やめろ」と言い、西に妄想する男がいれば「無駄なことはやめておけ」と言い、南で恋の花火が散りかけていればすぐさま水をかけてやり、北ではつねに恋愛無用論を説いた。おかげで私は「空気の読めない男」というレッテルを貼られた。しかしそれは誤解だった。誰よりも細かく空気を読んだ上で、意図的に何もかもぶち壊していたのである。
しかし私は負けなかった。負けることができなかった。そしてあのとき負けていた方が、きっと私もみんなも幸せになることができたのは言うまでもない。小津は幸せにならなくてもよい。
負けてたまるか。人恋しさに負けてたまるか。
「キョウハココマデなんて思ってるのではないでしょうな。まったくあなたには呆れてものもいえない。神の言葉に逆らわず、とっとと恋路を走りやがれ」
成就した恋ほど語るに値しないものはない。
「僕なりの愛ですわい」「そんな汚いもん、いらんわい」
「たしかに私の傍らに黒髪の乙女はいない。ほかにもいくつか相違点があるかもしれない。しかし、それらは些細な問題だ。大切なのは心である。」
「城ヶ崎氏よ、そのままあなたの道を顎を上げて歩め。あなたの前に道はなく、あなたの後ろに道はできる。私は心の中で熱いエールを送った。むろん、香織さんにもである。」
「まだ人生が始まってもいないくせに迷ってるのか」「貴君、ここはまだ御母堂のお腹の延長だぞ」
「貴君ならば大丈夫だ。これまで二年間よく頑張ってきたじゃないか。この先二年と言わず、三年でも四年でも、きっと立派に棒に振ることができるだろう。私が保証する」
「可能性という言葉を無限定に使ってはいけない。我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々がもつ不可能性である」
「我々の大方の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。自分の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根元だ。今ここにある君以外、ほかの何者にもなれない自分を認めなくてはいけない。君がいわゆる薔薇色の学生生活を満喫できるわけがない。私が保証するからどっしりかまえておれ」
「俺の馬鹿野郎……」
「こんな四畳半では利口も阿呆もみじめなものさ」

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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(森見本全冊レビュー、2冊目)

 

▼森見登美彦全冊レビューへ向けて1作目『太陽の塔』

森見登美彦『太陽の塔』感想と解説|デビュー作にして森見妄想青春文学の完成品