2020年に読んだ小説の個人的ランキング、ベスト10冊をご紹介します。ネタバレなし。何かの参考になれば幸いです。
2020年にようやく三大奇書(『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』を読み終えた事が大きかったです。あと伊坂幸太郎作品を約3ヶ月掛けて全部読んだので、充実度の高い1年でした!
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1位:『逆ソクラテス』伊坂幸太郎
私の伊坂幸太郎作品制覇、人呼んで「霊峰“伊坂山”一人大登山」の道のりはこの一冊から始まりました。
『逆ソクラテス』。
なにしろ、タイトルが素敵過ぎませんか?気になり過ぎませんか?
伊坂幸太郎作品はそれまで完全に未読の「伊坂幸太郎童貞」でしたが、タイトルに秒で撃ち抜かれて手に取りました。
そしてTwitter上で最初に伊坂作品読むなら何でしょう?とつぶやいた所、親切な読書アカウントの皆様からなんと速攻で16作品も教えていただきました!恐るべきTwitter、恐るべき伊坂作品、そして恐るべき伊坂作品を愛する皆様の知識量!
そして教えていただいたリストを眺めながら、
「…こりゃ、全部読まなきゃ嘘だわ」
と結論づけて、6月17日~10月14日の4ヶ月間をかけて42作品読み切りました。至福の時だった。こういうの、またやりたい。
肝心の『逆ソクラテス』の中身ですが、子どもが主役で大人の常識・固定観念に立ち向かうという話が詰まった短編集。一つ一つの話の面白さ、最終的な伏線回収、読みやすさ含めて最高でした。清々しく、また大人になった今だからこそ改めて勇気をもらえる内容(もちろん若いうちに呼んでも◎)で、万人におすすめできる一冊でした。
伊坂作品の最初として読んでもヨシ、最後に読んでもなおヨシ。
私みたいに偏屈に42作品の最後に据えて読まずとも、いきなり読んじゃってOKな良書です。
2位:『匣の中の失楽』竹本健治
ミステリの三大奇書と言えば、夢野久作『ドグラ・マグラ』、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、中井英夫『虚無への供物』です。
そして本作、竹本健治『匣の中の失楽』を加えて四大奇書と言うこともあります。
私は三大奇書を2020年に読み終えて、すぐさま本作に取り掛かりましたが、圧巻でした。
一言でいうと、鬼才竹本健治先生が弱冠22歳で三大奇書のバトンをしっかり受け取り、あろうことかデビュー作で第四の奇書として完成させてしまった…という、文字通り鬼のような一冊です。
すべてのバトンを受取り、それぞれの奥義を完全に自分の技として昇華していく、戦慄を覚えるほどの鮮やかさ。22歳でですよ。オーパーツですよ…
三大奇書を読んでこそ、この四冊目が煌々と輝きます。ぜひトライして欲しい一冊です。
3位:『Another2001』『Anoter エピソードS』『Anoter』綾辻行人
「それ」が始まってしまったら、もう逃げられない…
今年は「ある」年なのか、「ない」年なのか?「夜見山現象」にまつわる謎と悲劇と虚ろと…
ミステリ界の巨匠、綾辻行人先生のAnotherシリーズ(『Another』『Another エピソードS』『Another2001』)は2020年に一気に読みました。やはり面白かった。
2020年に最新刊『Another2001』が発刊されたことで、Twitterで「#Anotherなら死んでた」ハッシュタグキャンペーンが行われていましたが、もうつぶやきたくて仕方なかったですね。しこたまつぶやいたけど。
鈍器と称された『Another2001』の分厚さにはちょっと怯んでしまうと思いますが(804ページ)心配いりません。小難しいことは考えず、一気に読めてしまいますよ。
読み終わったら皆で叫ぼう、「Anotherなら死んでた」と!!
4位:『三体』『三体Ⅱ黒暗森林』劉慈欣
中華SF?それってどうなの?美味しいの?
そもそもSF作品をあまり読んだことが無かったので敬遠していたのですが、書店で見かけた際に、メタルギアソリッドシリーズの仕掛け人小島秀夫氏が帯にお薦めコメントを出していたのを見て即買い。即積み。…読み始めるまでにはちょっと時間かかりましたが、読み始めてからは惹き込まれました。
SFって、宇宙戦争するんでしょ?惑星が爆発するんでしょ?ダークサイドに堕ちて、父親と闘ったりするんでしょ?という幼稚な偏見は来週の燃えるゴミの日に全部出しちゃってください。
これ、ただの化け物SFでした。めちゃくちゃに面白い。
中国発ならではの要素もありますが、特に偏ったところもなく世界レヴェルの内容です。喜怒哀楽をガンガン刺激してくれるし、痺れる名言も沢山。読まなきゃ損ですね。読まなきゃ損。
三体シリーズは三部作で、完結編が2021年に翻訳されて出版されるはずなので、ひたすらに楽しみ。
5位:『バトル・ロワイアル』高見広春
映画をかな~り昔に観ていただけで、本は読んでませんでした。
「The・人がバンバン死にまくる」一冊。
「皆さんにちょっと殺し合いしてもらいます」のビートたけしのイメージが強いと思いますが、本を読んでる時もそのイメージは最後まで払拭できませんでした(苦笑)。映画のインパクトは強すぎたな…
しかし、本の方が映画よりもさらに面白い。ビートたけしと藤原竜也のイメージを引きずっても無問題、一気読み出来ます。
非常に趣味の悪い本ではありますが、あくまで大人がエンタメとして読む分には、超がつくほどおすすめです。
6位:『タイタン』野崎まど
でっかい。しろい。地球を感じる。
すべての仕事をAIが代替するようになった未来の世界で、故障したAI巨人を修理する女性の「仕事」の物語。
前述の通りSF初心者の目線なので深いコメントは出来ませんが、しこたまでっかいスケール感と、巨人との地球の散歩の描写に美を感じて圧倒されました。その壮大さと気持ちよさが、読んでいて快感でした。
映画化してほしいな。巨人と一緒に、巨大な地球を感じたい。
7位:『ペスト』アルベール・カミュ
新型コロナウイルスの感染拡大、緊急事態宣言発令、行動制限、緊張と緩み、政府と市民の意識のずれ、苦しむ者と笑う者…2020年はとにかくコロナ1色でしたね。2021年には収まって欲しいです。切に…
そんな今だからこそ、ドSなカミュの言葉を感じるタイミングでしょう。
極限状態で人は何を感じるのか。何を考え、どう行動すべきか。
きっと、正解はないんです。しかし、それぞれの明るい未来を描いて、流されずに歩んでいかなければいけません。そのための足がかりになるかも知れません。
…ならないかも知れません。カミュは、ドSです。
8位:『午後の曳航』三島由紀夫
二部構成、戦慄必至。
青春の歪みがリアルに描かれる傑作です。『金閣寺』よりも個人的にはショックを受けました。
ページ数も短いし、三島由紀夫ビギナーにもお薦めじゃないでしょうか(私もビギナーですが)。言葉が力強く、美しい。そして人物描写が息苦しいほど躍動的。
「文学とはこうあるべきだ」と胸を張って言える一冊です。
そう言えば伊坂幸太郎『マリアビートル』に出てきた殺し屋・蜜柑も『午後の曳航』の一節を引用してました。
9位:『キネマの神様』原田マハ
アル中、ギャンブル狂のダメ親父が、映画によって救われる奇跡の物語。
登場人物達の暖かさと真摯な姿に、原田マハ作品は初めてでしたが、素直に感動しました。
コロナの影響で残念ながら帰らぬ人となった志村けんさんが主演で映画化するはずだった作品です。とても悔しい。そう言った意味でも2020年のベストにランクインさせたかった。
映画好きなら反応する仕掛けが沢山。でも映画に詳しくなくても十分楽しめます。私はどっちかというと後者ですね。
10位:『ノルウェイの森』村上春樹
私は本を人にオススメされると「あの人はどこで面白いと思ったのかな?」と考えながら読むのですが、この本は歴代でも指折りなほど、多くの人にオススメされた本です。
だから、オススメしてくれた大勢の生霊が背後霊としてびっしり張り付いてくれた一冊となりました。うらめしや。
「生と性と死」そして「責任」がテーマの一冊。
「読み手の感情を入れる器としての精度」が非常に高く、「純粋な気持ちと極端な行動の危うい両立」が魅力的な名作だなと感じました。名言もゴロゴロ。
個人的に一つ言えることは、キズキかわいそう。緑大っ嫌い。ピース。
読み終えて、ツイキャスで1時間ほどネタバレ含めて語りました。お付き合いいただいた方々、ありがとうございました。
多分それぞれの立場で感想が異なる作品だと思うので、読んだことある人と飲みながらじっくり語りたい。
ああ、私も誰かの背後霊になるのか…
おわりに
ということで、2020年に読んだ小説ベスト10いかがだったでしょうか。
適当なことを言いつつも、何かの参考になれば嬉しいです。読み終えた人、語りましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!