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村田沙耶香『丸の内魔法少女ミラクリーナ』あらすじ・感想|5段階の興奮を味わえる、村田世界の入門書

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51冊目『丸の内魔法少女ミラクリーナ』村田沙耶香

男としては、表紙の可愛さ、キラキラさに手に取ることを一瞬ためらいそうになりつつも、信頼の村田沙耶香さんの最新刊ということで迷わずレジへ。

読んでみて実感。これは、人にオススメ(布教)したくなる…!

ということで、なかなか他では味わえない興奮が楽しめる『丸の内魔法少女ミラクリーナ』をご紹介します。

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』村田沙耶香

文庫:216ページ

KADOKAWA (2020/2/29)

目次

村田沙耶香『丸の内魔法少女ミラクリーナ』の評価・どんな人にオススメか

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』はこんな人にオススメ

  • 村田沙耶香さんの作品が好きな人(元も子もない)
  • 新たな世界に触れたい人
  • 日常に退屈している人
  • 冗談が通じる人
  • 子どもの頃、魔法少女に変身したことがある女性
  • 興奮できる本を探している人
  • 「事実は小説より奇なり」ってそりゃあ確かに耳を疑うような現実もごく稀に起きたりもするけどやっぱり小説の独創性の方がアベレージ高いよね派の人

 

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』の勝手評価
読みやすさ
(5.0)
独創性
(5.0)
中毒性・興奮性
(5.0)
人に薦めたくなる
(5.0)
総合評価
(5.0)

12の短編で我々の常識を木っ端微塵に破壊してくれる『生命式』に比べてマイルド(かな…)なテーマが多いので、『生命式』は大好きだけど人にはちょっとオススメしずらかったですが、本書はバリバリ人に勧めたくなる良い具合の話が詰まった一冊です。

村田沙耶香さんと言えば『コンビニ人間』と思われがちですが、本書も肩を並べるくらい面白くて、頭をガーンとトンカチで叩いてくれる衝撃もあってオススメです!

 

村田沙耶香『丸の内魔法少女ミラクリーナ』の読み方

興奮、興奮…「五重の興奮」に浸れ!

『コンビニ人間』では「普通」。『生命式』では「セックスと葬式、カニバリズム」。『変半身(かわりみ)』では「土地の文化」…など、村田作品はことごとく「世界と価値観を再定義する」ものが多いです。

本書もそうで、

  • 『丸の内魔法少女ミラクリーナ』では「ごっこ遊び」
  • 『秘密の花園』では「初恋」
  • 『無性教室』では「性別」
  • 『変容』では「怒り」

 

…をテーマに、世界と価値観を再定義してくれます。

各テーマが強烈に提示されるため、読みながら頭がグラつき、酔いが生じるかも知れません。ですが、徐々にその世界観にチューニングされていく自分がいることに気がつくでしょう。結構気持ちいいもんですよ(怪)。

その状態になると、読者は村田さんが創った世界の中を初めて訪れた人になります。何もかもが新しく見える。

村田さんはその特殊世界の中での「あるある」をまず提示する。…なるほど、そういうものか。と理解できる。

その次段階として、その世界から「逸脱したケース」「特殊ケース」を提示します。だから先が読めない。「新鮮」×「新鮮」という図式になるので、読者として途中からあきらめモードに突入します。「ああ、もうこの世界の流れに身を任せよう…」となっていくわけです。

だから、物語の中にエロ描写なども登場しますが、現実世界の卑猥とは違って、素直に受け入れて読み進められるので、どういうわけか清らかに感じてしまう自分がいます。これも村田作品ならではの妙味です。

というわけで、

  1. 突如、現実世界の常識から切り離される興奮
  2. 新世界のルールに触れる興奮
  3. 新世界の「あるある」を見せられる興奮
  4. 新世界の「例外ルール」を見せられる興奮
  5. 物語の先が読めない興奮

 

この五重の興奮を味わいながら、村田世界に没入して読み進めることをお勧めします。

 

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』のあらすじと感想

誰にでもある「ごっこ遊び」が世界を救う?

「変身!」

幼い頃、キラキラのコンパクトを開いて呪文を唱えれば、誰でも魔法少女になれた。

そして変身後は、なぜだか普段とは違う力が全身にあふれ、立ちはだかる敵も魔法でやっつけることができた――

男の子なら、戦隊ヒーローになれたし、もしかしたらハリーポッターだったかも知れません。とにかく、おまじないひとつで、現実を超越する力を手にすることは誰だって可能だったわけです。

でも、それを36歳のOLにもなってまだ続けている現役の魔法少女…のお話。

主人公の茅ヶ崎リナは「魔法少女ミラクリーナ」として変身すると、不思議と正義感とやる気がブーストされて、それが仕事や日常の問題を片付けるのに役立つ。いわゆるゾーンに入ったってやつですね

ごっこ遊びを大の大人になっても続けている気恥ずかしさと、でも人生に結構役立つんだという希望と勇気を与えてくれる作品です。

ポップな出だしも一転、ぶっ飛んだ展開に一喜一憂

ヒーロー物、ヒロインものによくあるような浮き沈みの起承転結ではないですが、親友のモラハラ彼氏を巻き込み一騒動になっていくのですが、まあ予想できるようなストーリーではないです。やっぱりそこは村田沙耶香作品、ぶっ飛んだ展開になります

「そうなるのか…!」と驚きつつも納得できる展開で、読む手が止まりません。

個人的には、しっかりハッピーエンドになってくれるこの表題作はとても爽快な読後感があります。淡い記憶と青春。万人にオススメ。

 

『秘密の花園』のあらすじと感想

「初恋」と、どう向き合うか

少し内気な女性である内山さんが、初恋の相手である早川くんをひょんなことから「監禁」した。さあ、どうなる…?

初恋の相手って、どこか偶像化しますよね。私もそうでした。そしてなかなか、その偶像を振り切ることができないものです。

内山さんの意外な初恋の対処方法に驚き、興奮してください。

こんなやり方、あったんだ…!

そして読後にこうつぶやくことでしょう。悪くないだろう、と…

 

『無性教室』のあらすじと感想

「性別」を無くした世界で、恋をしたらどうなるのか

この作品は、美しい実験だなと思いました。「性別」を校則で禁止され、皆友達の性別がハッキリとはわからない学園での恋物語。

「隠された部分」に興味がわき、それを知りたいという欲望が生じるのは、人間の本能

この物語の顛末は、後から思えばとても自然な話かも知れません。性別禁止、というルールで学校が始まったら、本当にそうなるのだろうと思えるくらい素直な気持ちで読み進められます。そして美しい。

私が一番好きな一文はこちらです。

蝉の声がする。夏休みが近づいている。セナは透明な性別のまま、私を見つめている。

 

『変容』のあらすじと感想

「怒り」って、古くない?

最近の若者は「怒らない」。言葉で表現すると、若い人たちが物事に真剣に向き合わないから、怒ることから逃げているのかな?と思うかも知れませんが、違います。この作品では、本当に「怒らない」。むしろ、「怒る」という感情を知らない若者がたくさん登場します。

主人公の純子は、怒らない若者に違和感を覚えます。そして「怒り」は古い世代の流行の感情で、誰か流行の仕掛け人が仕組んだものだということに気が付く。

最近は「エモい」という言葉がありますが、今60代以上の人が聞いても理解できないのではないでしょうか。「怒り」ですら、そういうものなんだ。誰かが仕組んだ流行の感情なんだ、と言うことになっています。

純子はバブル世代のおばさん五十川と、流行を仕掛けるパーティーに「そんなもんぶっ壊してやる!」と意気揚々乗り込むが…という、笑えるけどなかなかにゾッとする話です。

 

どの話もサクッと読めて、実は綿密に創り込まれた世界観。流行りのVRゴーグルなんか装着しなくても、村田作品を読めば刺激的な疑似世界を体験できますよ。

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』村田沙耶香

文庫:216ページ

KADOKAWA (2020/2/29)

↓村田沙耶香『生命式』の感想・ネタバレ・破壊してくれる概念一覧はこちら

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村田沙耶香『丸の内魔法少女ミラクリーナ』の目次

丸の内魔法少女ミラクリーナ
秘密の花園
無性教室
変容

村田沙耶香『丸の内魔法少女ミラクリーナ』の読了時ツイート

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