42冊目『変半身(かわりみ)』村田沙耶香
「ニンゲンを脱ぎ捨てろ。ポピ星人、ポーポー様、秘祭モドリ、海のもんと山のもん、エロコミ天国、遺伝子退行手術etc.
歴史は書き換えられ、世界は塗り替えられ、魂は入れ替えられていく――
演劇界の鬼才・松井周と練り上げた千久世島ワールドを舞台に、村田沙耶香が圧倒的イマジネーションで紡ぐ新たな人類のための異形の《創世記》ここに誕生!」
帯の言葉にそそられて即買いした、村田沙耶香先生の最新刊、『変半身(かわりみ)』。
そしてやはり直感は正しく一気読み。凝り固まった頭を丸洗いしてくれるような清々しい読書体験ができました。
『変半身(かわりみ)』村田沙耶香
出版社: 筑摩書房 (2019/11/28)
単行本: 176ページ
村田沙耶香『変半身(かわりみ)』はこんな人にオススメ
- 既存の概念をぶっ壊してほしい人
- コンビニ人間は面白かったけどちょっと物足りなかった人
- この世界は現実なのか?と疑ったことのある人
- 小説で刺激が欲しい人
- 世界の真実を知りたい人
村田沙耶香『変半身(かわりみ)』の感想
村田沙耶香先生の作風はどれも既存の概念をぶっ壊してくれるものになっています。
そして本作も、否応なしにそのあたりに注目して読むことになります。
ある意味、村田作品のそれぞれが村田教という宗教の新しい福音書で、それらの教示をありがたく受け入れるのが我々読者に課せられた役目であると言えるでしょう。
そう、村田作品を読んだものは、村田作品を布教しなくてはならない…!
そんな気持ちにさせてくれる本作。今回ぶっ壊してくれる概念はこちら。
- 文化
- 習慣
- 人間という生き物
最初は「ああ、変わった世界観の小説だな」程度の印象でスラスラ本作は読み進められると思います。
しかし、徐々に「あれ、世界が回ってる…?」と言う感覚に陥りだし、途中から何が本当かわからなくなります。
そして終盤「人間って何なんだったっけ…?」と人間という生き物に不安感が生じ、
ラストは一周回って「んなこたあるかい!」と大きくツッコミを入れてしまう自分がそこにいることでしょう。
そうです。本作は読み進めながら4つのどんでん返しに出会うことができる素敵な書です。
- 感覚のどんでん返し
- 理解のどんでん返し
- 存在のどんでん返し
- 緊張と緩和のどんでん返し
徹底して常識にメスを入れまくった村田御大は、本作で「常識をつくるプロデューサー」なる、ある意味世界の創造主とも言える存在を登場させます。
しかも、そんな重要人物を、神的存在のくせにせせこましく金を取る商売人として描きます。
そんな所でも村田御大の斜めな目線が作風に現れています。世界の創造主なんて私が創造してるんだから偉そうな顔してんじゃねぇ!と。
セカイ系だ?やかましい!あたしゃセカイ作っては壊し、作っては壊ししとんじゃ。そんなにセカイ感じたきゃアクトレイザーでもやっとけ!と言わんばかりです。
「この常識って、本当にそれでいいんですか?」
「それは作られた常識じゃないんですか?」
「妄信的に右へならえで、あんた大丈夫?」
「だったら、その常識ぶっこわすけど、お前らも黙ってついてこいよオラァ!」
とても清々しい村田教典の一冊が『変半身(かわりみ)』です。
硬化した脳をシェイクして高次元に運んでいただける本書をぜひ、ご堪能ください。
ちなみに同録の『満潮』ですが、こちらは「性の役割」について、ご教示いただくことができます。
登場する二人の男女の性への真摯な姿勢に涙し、爆笑し、あっけにとられることは確実です。『変半身』とはまるで180°違った世界観なので、N極からS極へ飛ばされながら振れ幅を楽しんでください。
『変半身(かわりみ)』村田沙耶香
出版社: 筑摩書房 (2019/11/28)
単行本: 176ページ
※そして12の短編で20以上の概念を焼き尽くしてくれる、2019年ベスト村田教典『生命式』も、人類の必読書です。こちらもレッツ入信!
↓村田沙耶香『生命式』の感想・ネタバレ・破壊してくれる概念一覧はこちら
↓村田沙耶香『丸の内魔法少女ミラクリーナ』の感想・あらすじはこちら
村田沙耶香『変半身(かわりみ)』の目次
変半身(原案=松井周 村田沙耶香)
満潮
村田沙耶香『変半身(かわりみ)』の読了時ツイート
78冊目
村田沙耶香『変半身(かわりみ)』拝啓
いつも村田先生には、我々に息づく何らかの常識・価値観を破壊して頂き、感謝しております。
今回は「文化と慣習」。ありがたく概念粉砕を拝受しました。
同録の『満潮』。性への真摯に感銘いたしました。
今後ともよろしポーポーポー
敬具#読了 pic.twitter.com/1MtTeBEzXp
— うまいごす@本食べ系男子 (@umaigos) December 16, 2019