37冊目『異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考』佐々木紀彦
いまは、無いものが無いほど、モノで溢れかえっています。
「モノ」単体では人を満足させにくい時代になった。
その前提で、日本をもっと面白くするにはどうすればいいか?
そのためには現代人には、「スキル」が要る。
「モノ」と「モノ」をかけ合わせ、新しいモノを生み出す「スキル」。
そのスキルこそが「編集思考」だ。
シンプルで奥が深い内容です。本書を読めばわかりますが、一朝一夕で極められるものではありません。しかし、「何かと何かをコラボレーションさせる」という考え方自体はありふれたもの。誰でも「やってみる」ことはすぐできます。
人生なんてトライ・アンド・エラーの連続です。やってみて、高めていけばいいのです。入り口は広いけど、登ってみると結構険しい山だった。でもその方がワクワクしながら実践できると思いませんか?
ビジネスマン、特に企画職系の方はマスト。遊びなどプライベートでもかなり使える考え方です。まだまだ昭和や平成の栄光にしがみついていたい…って人以外は全員読んだほうがいいと言える実用的指南書です。
『異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考』
(NewsPicksパブリッシング)
発売日:2019/10/4
『異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考』はこんな人におすすめ!
☑ビジネスマン、特に企画職はマスト
☑新しいアイデアを生み出したい人
☑売れているものがなぜ売れているのか、知りたい人
☑これからの時代を生き抜く力が欲しい人
さっきも言いましたが、「過去の栄光でもう十分食っていけるし、新しいことなんてしなくていい!」と本心で思っている人は、本書は読む必要がありません。
「NewsPicksパブリッシング」第一弾書籍
NewsPicksは各種経済メディアでのホットなニュースを集めて、有名人(ホリエモンや落合陽一、芸能人、有名企業の社長などなど)をはじめ、誰もが実名で一回だけコメントできる、というアイデアで大人気のサービスです。
▼NewsPicksのリンク
https://newspicks.com/
この会社はとても先進的で、セミナーを開催したり本を出版したり、オリジナルの記事や動画もネットにバンバン公開したりして大変おもしろい企画を世に生み出しています。
その中の「出版」ではこれまで幻冬舎と組んで前田裕二『メモの魔力』、堀江貴文『多動力』『ハッタリの流儀』、落合陽一『日本再興戦略』など、これまたヒット作をバンバン出していっています。
おそらくその流れからの派生で、NewsPicks社のオリジナルレーベルとして立ち上がったのがこの「NewsPicksパブリッシング」。本書『異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考』はその第一弾です。
▼NewsPicksパブリッシング
https://publishing.newspicks.com/
ちなみに第一弾は、経営学者であり、埼玉大学 経済経営系大学院 准教授である宇田川元一さんの『他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論』を加えた2冊になります。
『異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考』の内容と解説
著者 佐々木紀彦さんについて
NewsPicks Studios CEO。1979年福岡県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業、スタンフォード大学大学院で修士号取得(国際政治経済専攻)。東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。2012年、「東洋経済オンライン」編集長に就任。2014年「NewsPicks」初代編集長に就任。
高学歴にして、メディア系の仕事を続けながら新しい挑戦を続ける佐々木さん。こんな人が時代を創るんだな、切り拓いていくんだなと思ってしまいますが、本書を読み編集思考を実践していけば、誰もが同じく道を拓いていくことができる。そんな希望も与えてくれる一冊です。
「編集思考」とは何か?
まず、編集とは何か。佐々木さんは
編集とは、
「素材の選び方、つなげ方、届け方を変えることによって価値を高める手法」
であると言っています。
商品やサービスは、あらゆる分野で価格や機能の競争は行き着いてます。元素記号としてのモノはほぼすべて出揃った時代と言えるでしょう。
ならば、その元素同士をかけ合わせて化学変化を起こさないと、ワクワクできるような新しいものは生み出せない!そのための思考方法こそが「編集思考」です。
基本的に編集思考では「何か」×「何か」で新しいモノを表現します。
[box02 title=”編集思考の例”]電話×パソコン×ネット=iPhone
テレビ×ネット×ドラマ=ネットフリックス
車×シェア×ネット=Uber
家×シェア×ネット=Airbnb
オフィス×シェア×コミュニティ=WeWork
書店×カフェ×モノ=蔦屋書店
モノ×シェア×スマホ=メルカリ
予備校×動画×スマホ=スタディサプリ
アニメ×ゲーム×位置情報=ポケモンGO
アイドル×選挙×コミュニケーション=AKB[/box02]
ただ、こんな楽しい考え方、どんな企業でも実行してそうですよね?
佐々木さんは、日本企業はこの編集思考を実践するのがヘタだと言っています。それは日本企業の多くは「縦割り病」がはびこっているために、新しい発想が出てくることを阻んでいるからなのだそうです。
編集思考では、「横串でものごとを捉えていく」ということがポイントになるので、年齢や役職、業種業態も関係なく良いものを見つけて掛け合わせていくことが大切になります。
佐々木さんは、「空気を読み切った上で、空気を打ち破る」力が必要だと指摘しています。わかる…すごいわかる!!
「編集思考」を実践する4ステップ
編集思考は、「セレクト」「コネクト」「プロモート」「エンゲージ」の4つのステップで成り立ちます。
編集思考は
「セレクト」→「コネクト」→「プロモート」→「エンゲージ」
で成り立つ!
言い換えれば、
尖った長所を「選び惚れ抜く」
それらを「掛け合わせる」
自信を持ち「世に送り出す」
改善しながら「深めて育てる」
この流れで進めていくということです。
細い手法は本書を読んでいただきたいですが、要するに今の時代はネット全盛です。商品を作るだけで勝手に売れる時代でもありません。
今は、商品を販売して、改善して、お客様とともに高めて育てていく…商品(サービス)自体の生き死にまで責任を持って可愛がる必要がある!という、ちょっと面倒くさいけど最高に楽しい時代なんだと思います。
本書では具体例として、
- Newspicks
- ネットフリックス
- ディズニー
- WeWork
がいかなる編集思考を実践しているのかを分析されています。概念が具体的な手法とともに頭に入ってくるので、非常にわかりやすいです。
「編集思考」を身につけるには
編集思考を実践するための3つのリソースが
「教養」
「人脈」
「パワー」
です。
「教養」がなければ、何をかけ合わせると面白くなるか?その本質がつかめません。気楽にぱっと思いつきでは、世間を驚かせるアイデアは出てこない。とにかく普遍的な教養をみにつけなければいけません。
アイデアが生まれたとして、それが正しいのか、本当に面白いのか、実現可能なのかをチェックしてくれる、後押ししてくれる「人脈」を持っていることは重要です。
そして、それなりの権力、発言権、実行力としての「パワー」がなければアイデアは形にできないのです。
編集思考を磨く行動は6つ。
- 古典を読み込む
- 歴史を血肉とする
- 二分法を超克する
- アウェーに遠征する
- 聞く力を磨く
- 毒と冷淡さを持つ
3の「二分法を超克する」だけわかりにくいと思うので補足すると、とにかく掛け合わせるためには「それはそれ」「あれはあれ」という二分法にこだわっていると次が生まれません。
東洋文化はもともと二分法ではないので感覚的にはわかるはずですが、このことを意識して物事を捉える訓練をするということです。
最後に
本書は本当にシンプルな物言いで、とにかく編集思考が大事だと述べています。
ですが、そのためには圧倒的な教養と人脈とパワーが必要。日本をもっと面白くするために、みんなで編集思考を身に付けて、縦割り組織をぶっ壊そう!と言っています。
NewsPicksで見る佐々木さんは親しみやすく柔らかい印象でしたが、読書好きで、かなり尖っていて強い想いを持った方だということが、本書を読んでわかりました。
私も編集思考を磨くべく、古典の読書量も増やそう…と心に決めました。
2020年以降を生き抜く社会人として必読の一冊です。
『異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考』
(NewsPicksパブリッシング)
発売日:2019/10/4
『異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考』の目次
目次
はじめに 「編集」は、メディアの外でこそ活きる
・編集思考を身につけ、「思考の檻」から脱出しよう
・「正解」が失われた人生を再編集する
第1章 「縦割り」の時代から「横串」の時代へ
なぜ今、編集思考なのか
・日本社会が繰り返す負けパターン
・生まれてから死ぬまでずっと縦割り
・落合陽一はなぜ貴重なのか
「経済×テクノロジー×文化」を越境する人材になれ
・シリコンバレーは文化的につまらない
・日本が変われないのはメディアが変わらないから
・ウォール街×シリコンバレー×ハリウッドを抱える米国の強さ
・人文科学は復権する
第2章 編集思考とは何か
そもそも、編集とは何か
・同じ素材でも編集で価値は何倍も高まる
・編集者とは「偉大なる素人」である
・選び、つなげて、届けて、深める。編集思考の4つの機能
セレクト:選ぶ
・セレクトの法則1:いいところだけを見て、惚れ抜く
・セレクトの法則2:直感をダブルチェックする
・セレクトの法則3:両極に振る
コネクト:つなげる
・コネクトの法則1:「古いもの」と「新しいもの」をつなげる
・コネクトの法則2:「縦への深掘り」と「横展開」でつなげる
・コネクトの法則3:文化的摩擦が大きいもの同士をつなげる
・アイデアを組織の政治につぶされない5つのヒント
・すべてをフラットにつなぐオープンなリーダーシップ
プロモート:届ける
・プロモートの視点1:Timeline(時間軸)
・プロモートの視点2:Thought(思想)
・プロモートの視点3:Truth(真実)
エンゲージ:深める
・サブスクリプションとは顧客との「婚約」である
・エンゲージの4C
・コミュニティは高コスト。だがやるべき
・エンゲージメントの時代は一貫性が問われる
・ザッカーバーグには「顧客」がいなかった
・「深く濃密」ではなく「つかず離れず」がいい
第3章 ニューズピックスの編集思考
流通(プラットフォーム)と制作(パブリッシャー)を「つなげる」
・プラットフォームとパブリッシャーの不平等条約
・テレビと新聞の強みはコンテンツではなく流通
ニューズピックスのセレクト
・経済コンテンツというグローバルニッチに特化
・人×アルゴリズムによるニュースの選出
・実名に限定したコメントの選出
・選んだら、まず創る
ニューズピックスのコネクト
・プロフェッショナル×ユーザー
・ビジネス×コンテンツ×テクノロジー
・メディアの主役はつねにテクノロジーだった
・コンテンツ大融合時代の到来
・なぜ、ニューズピックスはQuartzを買収したのか
ニューズピックスのプロモート
・賛否両論の「さよなら、おっさん。」に込めた思想
ニューズピックスのエンゲージ
・ニッチ×エッジ×キャッチー
・ニュースよりもインサイト
・コミュニティの創り方、活かし方
・時代の振り子は「リアル」に振れる
第4章 世界最先端企業の編集思考(ネットフリックス、ディズニー、WeWork)
コンテンツ黄金時代、開幕
・メディアの新旧交代を強烈に印象づけた「3億ドル」の契約金
・最強の金の成る木「1P」
・エイブラムスという時代の寵児
・日本にもコンテンツ黄金時代が到来する
ネットフリックスの編集思考
・運命を変えた3つのターニングポイント
ネットフリックスのセレクト
・選んだら、後は任せる
・プロフェッショナルであるからこその「解雇する力」
ネットフリックスのコネクト
・テクノロジー×クリエイティブ
ネットフリックスのプロモート
・思想としての「クリエイティブフリーダム」
・ユーザーファーストよりも「クリエーターファースト」
ネットフリックスのエンゲージ
・深いエンゲージを支えるリアルタイムデータ
・「信者がいない」という弱点
ディズニーの編集思考
・ウォルト・ディズニーは編集思考のレジェンド
ディズニーのセレクト
・シリーズもの×リメイクで驚異の利益率を達成
ディズニーのコネクト
・『アラジン』の王女ジャスミンの設定が原作と異なる理由
・世界観を保ったまま、買収で規模を広げる
ディズニーのプロモート
・誰より教育熱心だったディズニー
ディズニーのエンゲージ
・作品の世界観をリアルの場で体感する
WeWorkの編集思考
・なぜ「コワーキングスペース」に約5兆円の時価総額がつくのか
・「何を売っているかよくわからない」という強み
WeWorkのセレクト
・データを駆使した一棟借り戦略
WeWorkのコネクト
・ウェブ×フィジカル
・不動産×テクノロジー
・スタートアップ×大企業
・会員×仕事の機会
WeWorkのプロモート
・ミレニアル世代を引き付けた「Do What You Love」
WeWorkのエンゲージ
・利害ではなく思想でつながる
第5章 編集思考の鍛え方
編集思考の3つのリソース
・教養、人脈、パワー
・普遍という土台があってこそ、最新の知が活かされる
・スタートアップこそシニアとつながるべき
・世の中を変えるためにあえて「権力」にこだわれ
・編集思考は歳を重ねるほど高められる
編集思考を磨く6つの行動
・行動1:古典を読み込む
・行動2:歴史を血肉とする
・行動3:二分法を超克する
・行動4:アウェーに遠征する
・行動5:聞く力を磨く
・行動6:毒と冷淡さを持つ
第6章 日本を編集する
編集思考は、誰かのために使うもの
・自分のために動けるのはせいぜい30代まで
・グローバルな時代に、あえて日本にこだわる
・日本の「経済×テクノロジー×文化」のポテンシャルは高い
・ニューズピックスがこれから編集する7つの領域
・福沢諭吉のような「時代精神」を創る
おわりに 編集思考は「好き」から始まる
注釈