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三島由紀夫『金閣寺』感想|圧倒的表現と鬱屈した幻想哲学に酔う日本文学

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5冊目『金閣寺』三島由紀夫(おすすめ本2冊目)

今回は、twitterフォロワーのつちのーし@読書垢さん(@bookordead)にご紹介いただいた1冊。

私にとって、初・三島由紀夫でした。日本文学の代表選手でもある氏の名著、『金閣寺』。期待を遥かに超える美しい日本語の嵐で叩きのめされました。

『金閣寺 (新潮文庫)』三島由紀夫
文庫: 384ページ
出版社: 新潮社; 改版 (2003/05)

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いきなりですが、こんな素晴らしい作品をおすすめいただき、ありがとうございました!

不必要なネタバレはしないようにアウトプットレビューしていきます。

目次

『金閣寺』の読みどころ

1950年に実際に起きた、金閣寺の放火事件を元に三島由紀夫氏が創作した物語。

私的な読みどころは、とにかく美しい日本語による描写の数々です。

クセの強い一人の人間が見た「世界」を、これまたアクの強い視点で完膚なきまでに描ききる言葉の表現が素晴らしい。

金閣寺という美の一つの極致であるものの情景描写に対する、ハンデキャップを背負う主人公の心理描写が重なり合う。

ある種、荒唐無稽なのに首尾一貫した語調と哲学が、読むものに有無を言わさない説得力を持って迫る怪作だと思います。

私の感情にも、吃音があったのだ。私の感情はいつも間に合わない。その結果、父の死という事件と、悲しみという感情とが、別々の、孤立した、お互いに結びつかず犯し合わぬもののように思われる。

一寸した時間のずれ、一寸した遅れが、いつも私の感情と事件とをばらばらな、おそらくそれが本質的なばらばらな状態に引き戻してしまう。

私の悲しみというものがあったら、それはおそらく、何の事件にも動機にもかかわりなく、突発的に、理由もなく私を襲うであろう。

物語の序盤は、主人公である溝口の背負う状況や過去の体験が主となっています。

金閣は、音楽の怖ろしい休止のように、鳴りひびく沈黙のように、そこに存在し、屹立していたのである。

金閣は無力じゃない。決して無力じゃない。しかし凡ての無力の根源なんだ

金閣寺に異様な執着心を持つ溝口青年に、気がつくと感情移入していることでしょう。

「美」と「性」と「苦悩」の哲学

少年時代から重度の吃音(どもり)症を持つ主人公の溝口と、内翻足という障害を抱える柏木青年。その二人の美と性に対する、苦悩の哲学は圧巻です。

特に、溝口に様々な投げかけをする柏木の言葉は、記憶に残るものが多い。

不安もない。愛も、ないのだ。世界は永久に停止しており、同時に到達しているのだ。

人の苦悶と血と断末魔の呻きを見ることは、人間を謙虚にし、人の心を繊細に、明るく、和やかにするんだのに。俺たちが残虐になったり、殺伐になったりするのは、決してそんなときではない。

俺たちが突如として残虐になるのは、たとえばこんなうららかな春の午後、よく刈り込まれた芝生の上に、木洩れ陽の戯れているのをぼんやり眺めているときのような、そういう瞬間だと思わないかね。

性欲かい?まあその中間だろうな。人間と石との、堂々めぐりの鬼ごっこさ

美しい景色は地獄だね

自分の生まれた意味とはなにか?自分の人生の「主題」はどこにあるのか?

二人の生きざまを見せつけられ、そんなことを考えさせられずにはいられませんでした。

『金閣寺』で特に印象に残ったセリフ

特に印象に残った溝口と柏木の口論の一幕を最後にご紹介します。

柏木
いいかね、他のものは何一つ世界を変えないのだ。認識だけが、世界を不変のまま、そのままの状態で、変貌させるんだ。認識の目から見れば、世界は永久に不変であり、そうして永久に変貌するんだ
溝口
世界を変貌させるのは行為なんだ。それだけしかない

最近の読みやすい小説も私はとても好きですが、『金閣寺』に見るハードコアな日本語による文学も、とても魅力的だと思いました。

情景表現が立っている。キャラクターが立っている。哲学が立っている。三拍子揃って尖った『金閣寺』。有名作なので知っている人も多いかとは思いますが、まだの方は、ぜひご一読下さい。

『金閣寺 (新潮文庫)』三島由紀夫
文庫: 384ページ
出版社: 新潮社; 改版 (2003/05)

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『金閣寺』に合う曲

溝口青年の鬱屈した青春と人生。eastern youthの『踵鳴る』と、al.ni.coの『晴れた終わり』が合うのではないでしょうか。熱く冷静な『踵鳴る』と、終末感と決意漂う『晴れた終わり』。こちらも心を動かされる曲達です。

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『金閣寺』の読了時ツイート

本に関するYouTubeもやっているので、ぜひ御覧ください!

  • 本の事について話すYouTubeやってます。良かったら覗いて行ってくださいね!

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