相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』
すべてが、反転。
あなたは探偵の推理を推理することができますか?
ミステリランキング5冠を達成した前作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の正統な続編となる本作。タイトルにもある通り、今回は最初からわかっている倒叙ミステリ。前作とは味わいの異なるこの作品で、しっかり「城塚翡翠シリーズ」が動き出した感があります。みんな大好き翡翠ちゃんの活躍を見逃すな!
相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』の目次・あらすじ
相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』の目次
- 雲上の晴れ間
- 泡沫の審判
- 信用ならない目撃者
相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』のあらすじ
あまりの衝撃的結末に続編執筆不可能と言われた、5冠獲得ミステリ『medium 霊媒探偵城塚翡翠』待望の続編!
綿密な犯罪計画により実行された殺人事件。アリバイは鉄壁、計画は完璧、事件は事故として処理される……はずだった。
だが、犯人たちのもとに、死者の声を聴く美女、城塚翡翠が現れる。大丈夫。霊能力なんかで自分が捕まるはずなんてない。ところが……。
ITエンジニア、小学校教師、そして人を殺すことを厭わない犯罪界のナポレオン。すべてを見通す翡翠の目から、彼らは逃れることができるのか?。
ミステリランキング五冠を獲得した『medium 霊媒探偵城塚翡翠』、待望の続編は犯人たちの視点で描かれる、傑作倒叙ミステリ中編集!
「BOOK」データベースより
前作の衝撃が続編へのハードルに直結していますが、『medium 霊媒探偵城塚翡翠』で翡翠ちゃんが「推し」になった人ならば必ず満足できる出来栄えの作品です。3つの中篇、どれも楽しめますよ。
相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』読了時ツイート
相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』の「invert」とは
前作のmediumも少し耳慣れない言葉でしたが、今回のinvertとはなんでしょうか。
in・vert
【他】…を逆さにする,ひっくり返す,…を裏返しにする;
〈位置・順序・関係を〉反対にする;〈性質・効果などを〉逆転させる;
inverted detective story:倒叙推理小説
「本作は倒叙ミステリですよー!」とタイトルとして声高らかに宣言していることがわかります。
また、「ハードルを上げに上げてくれた前作とは、バッチリ趣向を変えてますよー!だから安心して読んでね!前作で上がった期待値をそのまま背負って読まないで、ある意味フラットな気持ちで読んでくれたらありがたいんだぜ!」という相沢沙呼さんのクソデカボイスにも聞こえます。
そして私はinvertと言えばinverter、inverterといえばインバーター、インバーターと言えばインバーターエアコン、エアコンの効いた場所で読書したい。快適なブックカフェなどで深煎りした濃いめのブラックコーヒーと合わせて読書したい…!と、読む前からインバーターエアコンのことで頭がいっぱいになってしまいました。
インバーターエアコンの効いた過ごしやすい場所で、ぜひ読んで欲しい一冊です(意味不明)。
相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』のキラーキャッチコピー、「すべてが、反転。」
本作のキラーキャッチコピーが
「すべてが、反転。」
「invert」の言葉の意味、「反転する」と「叙述推理小説」のダブルミーニングなキャッチコピー。本作の中でもしっかりその意味を回収してくれます。
ミステリを紹介する時によく言われる「どんでん返し」って、これも「invert」ですよね。反転。おしゃれな言い回しになってますが、表現の違いこそあれこれもそういうことですよね。
このおしゃれ感と、翡翠ちゃんの蠱惑的な魅力の進化が本作ではとても目覚ましいのです。前作では、「一体どんな仕掛けが?伏線が…?あれもなのか?これもなのか…?」と肩に力を入れて読まなければならない部分がありましたが、今回は最初から犯人がわかっているのでそういう心配は不要。余計な緊張感はなく物語を楽しむことができます。
著者の相沢沙呼さんは奇術のたしなみもあるそうで、その様な「ステージに観客を注目させてあっと驚く仕掛けを披露」するような描写がちらほら。根っからのエンターティナーということなのですね。翡翠ちゃんも奇術の心得があるということですし、それぞれの解決編の前口上も愉しいですよ。
名倒叙ミステリの「古畑任三郎」や「刑事コロンボ」のオマージュ的なフレーズも多用されていて、知っている人ならニヤリとするシーンが沢山ありますよ!(私は古畑くらいしか詳しくないのですが)
相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』の読みどころは最終章の『信用ならない目撃者』
それぞれの章が独立した中篇として計3つの事件が城塚翡翠の前に立ちはだかります。
- ITエンジニア(雲上の晴れ間)
- 小学校教師(泡沫の審判)
- 人を殺すことを厭わない犯罪界のナポレオン(信用ならない目撃者)
私は、過去の経験上最初の『雲上の晴れ間』の物語が好きでしたが、何と言っても本作の注目はラストの『信用ならない目撃者』です。
これまでの説明を読んでも、もしかしたら「うーむ、前作の衝撃に比べたらやはりパンチが薄いかな…」と思いながら読む人も中にはいるかも知れません。
が、その気持ちもラストまで読むと
反転キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
ってなると思います。ぜひキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!して欲しいですね。
現在3作目まで刊行されている「城塚翡翠シリーズ」、続きも面白いぞ!
城塚翡翠シリーズの第2作目である本作は、「何を話してもネタバレになってしまう」ということはありませんが、その分しっかり翡翠ちゃんの魅力を堪能できる作品になっています。
そして、謎が全て明かされたわけではなく、関わる警察の思惑、そもそも城塚翡翠とは何者なのか?という謎が積み残されていきます。
2022年時点でシリーズ3作目の『invert II 覗き窓の死角』まで出ています。これからも翡翠ちゃんの戦いから目が離せないぞ!!
城塚翡翠シリーズ、これからも注目です!
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!