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小野不由美 小説『残穢』感想・ネタバレ考察|人物相関図、穢れの仕組み、地図の歴史…呪いの連鎖。閲覧注意の“本当にヤバい話”

こんにちは。なんとなく略しづらかったのでこの度改名しました、右脳迷子改め、うまいごす(@unoumaigo)です。スピッツ好きなので「す」をつけつつ、右脳要素を残してうまいごす。という形でごす。

26冊目『残穢』小野不由美(おすすめ本5冊目)

今回は、小野不由美『残穢』をご紹介します。

こちらはtwitterですみはし(@sumikko0020)さんからおすすめいただいた作品。ありがとうございました!

今回は記事を完成させるために3度ほど再読してノートを付けつつまとめました。真剣勝負で本と向き合うきっかけをいただけて、とっても嬉しいです。いつも真剣勝負で読んでいますが…今回は構成が難解だったのもあり、まとめるのにより時間がかかったので。普通はそんなことしなくても楽しく読める本です。

『残穢』小野不由美
文庫: 359ページ
出版社: 新潮社 (2015/7/29)

ダイエットの記録(4回め)

  • 体重:69.5kg(スタート時:69.5kg、目標:60kg)
  • 体脂肪:18.6%(スタート時:19.5%)

スタートに戻りました(失笑)。少しずつやっていきます。

小野不由美『残穢』の成分表示

あなたは、幽霊を信じますか?

私は一度もソレを見たことがないので、どちらかと言うとあまり信じてはいない方です。

でも事実、過去を遡れば日本中(世界中)で途方もない数の人が死んでいます。だとすれば、本当にいるなら実際は町中幽霊で溢れかえっていて、それはそれで結構賑やかだったりもするんじゃないか?…なんて思ったことはないでしょうか。

私が『残穢』を読んで真っ先に感じた事はそれです。

「逃げられないな」と。

さらに幽霊の中には、不幸な死を遂げた悪霊や怨霊もいて、現世の人に様々な影響を与えるものもあるでしょう。

だったらなおさら、逃げられないですよね。『残穢』は、極めて意図的に、読者をそんな世界に引きずり込んでくる「ヤバい本」

本書の言葉を借りれば「存在そのものが怪」と言うやつです。

今回ネタバレ要素を多めに含む為、未読の方はご注意ください!

小野不由美『残穢』のざっくりあらすじ

『残穢』をざっくりいうと

とあるマンションの一室で起こる「奇妙な音」「何者かの気配」。その怪現象の原因を辿り紐解くうちに浮かび上がる、死の因縁の数珠つなぎ。ドキュメンタリータッチで描かれる、日常のそばにある「誰も逃げ切れない」壮大なホラー絵巻。

ざっくり一言で『残穢』を語るとこんな感じなのですが、とても緻密な設定があってとても一言ではこの面白さと怖さを表現できません。

ということで、以下で細かめに設定やその背景を考察してまとめました。まずはたくさん出てくる登場人物から。

あくまで私が読み解いた範囲内でのまとめなので、雑だったり間違っている部分もあるかも知れません。間違っている所があれば、twitterなどで指摘いただければ幸いです。

小野不由美『残穢』の考察まとめ(ネタバレあり)

『残穢』の全体像を図解化

まず、全体の概要を図にしてみました。分かりづらいと思いますが…シンプルにしています。怪異Dが最強、大ボスです。この図に出てくる人たちは、ほぼあらゆる怪異に遭遇・感染していると思ってもらえれば概ね間違ってないかと。ざっくりとですが…

もっと細かいマインドマップもあるのですが、まとまりきれてなくて見にくい&醜いので公開しません。気になる人はお知らせいただければ…

登場人物

多すぎますが、本書を読めばそれぞれの役割がしっかり見えてきます。この複雑怪奇な構成を見事描ききった小野不由美さんのメンタリティと表現力には脱帽です。

★マーク+太字にしている人が、本作の重要な怪異の発生源です。4つあります。

謎を紐解くナビゲーター達

・作者:本書のメインナビゲーター。恐らく小野不由美さん本人
・久保さん:30代女性。都内編集プロダクションのライター。久保さんの部屋(岡谷マンション204号室)で起きた怪現象を辿るのが本書の大きな流れ。
・平山夢明:実在のホラー作家。作者の知り合いとして怪異の調査を手伝ってくれます。
・福澤徹三:実在のホラー作家。平山氏の知り合いとして調査を手伝ってくれます。

岡谷マンション関連

・屋嶋さん:401号室(1999年3月〜12月)
・西條さん:401号室(屋嶋さんのあと)
・益子さん:西條さんのママ友
・梶川さん:梶川亮。204号室の前住者。2001年末に自殺。
・伊藤さん:岡谷マンションの大家さん
・小井戸家
・小井戸照代:母親。1980年代にガンで死亡
・小井戸泰志:息子。ゴミ屋敷となった自宅で変死。
・藤原家:植竹金属工業の跡地にたった大邸宅
・根本家:藤原家の一部が後日分譲され、根本家に
・高野家:工場跡地に建つ
 ★高野トシヱ:嫁入り前の挨拶の日に首吊り自殺。
・松坂家:高野家が後日小井戸家と松坂家に。

岡谷団地関連

・黒石さん:岡谷団地から3年前に転居。
・鈴木さん:霊感あり、岡谷団地で怪現象に遭遇
・大塚さん:黒岩邸の斜め向かいの家に住む。特に怪異に遭遇せず。
・安藤さん:黒石邸を借りて、引っ越す。その後2008年殺人で逮捕された人と同一?
・飯田さん:岡谷団地で最初に家を出ていった人物。妻を刺して自宅に放火。夫は自殺。
・後藤家:後に岡谷団地となる土地に居を構える
・村瀬家:後藤家→作業場→村瀬家
・川原家:後に岡谷団地。母親が脳卒中で死亡(暴力が原因?)息子が暴力+放火未遂。
・政春家:父、母、長女、次女(光奈子)、長男(盛幸)、祖母の6人家族
・政春光奈子:自宅は「お化け屋敷」だと言う(怪異に遭遇)
・政春盛幸:妻と新興宗教にハマる
・稲葉家:岡谷団地以前の土地の隣に居を構える
・大里家:後に稲葉家が入る
・関家:後に大里家が入る
・篠山家:後に子沢山の家庭が入り、その後関家が入る
・中村家:岡谷マンションや岡谷団地にかかる長屋群に住んでいた住人。
★中村美佐緒:1952年、大量の嬰児殺しの罪で逮捕。
・吉兼家:植竹金属工業以前。
吉金友三郎:座敷牢で私宅監置。「暴力」「放火」を何者かの恨み声で命じられる
・吉兼三喜:寺で弔われた吉兼家最後の死者。奥山家から嫁ぐ

福岡関連

・奥山家
 ★奥山義宣:三喜の父。炭鉱の主。明治末頃、一家を皆殺し
・蓮見家:奥山家跡地に住む。有名な医者の家系も、二代で途絶。4人息子は全員自殺。
・真辺家:裕福な家庭だが凶宅として有名。夫は曰く付きの骨董コレクター。

スペシャルサンクス(取材に協力してくれた人関連)

・林至道氏:当該地区一体に檀家を持つ。寺を継いで20年。
・佐熊氏:林氏の檀家。政春光奈子と同級生。
・田之倉氏:神社の世話役。78歳。生まれも育ちもこの土地
・日下部氏:清子87歳、娘の千香68歳。高野トシヱと仲良しだった
・辻誠子:70歳。岡谷マンションの町近くで生まれ、別の町へ嫁いだ
・中島氏:植竹金属工業の近所に住んでいた。辻さんの2歳上
・鎌田氏:2006年、植竹金属工業に勤務経験あり
・明野氏:長屋の跡の川原家に詳しい人物
・方保田氏:辻さんの知り合い。長男が一家殺害、放火で死亡。
・國谷氏:住職。吉金家の墓石を管理

重要!『残穢』に登場する「穢れ四天王」

本作では、あらゆる「異変」が登場人物の身の回りで起こります。しかしそれは、元を正すと4つの根源があることがわかります。本当はもっともっと根深い凶悪な穢れもあるのでしょうが、そこまでは作中では触れられていません。

ということで、押さえておくべき穢れの大ボス、「穢れ四天王」をご紹介します。

ボス1(穢れ先鋒=怪異A):高野トシヱ

高野トシヱは、後に岡谷マンションとなる敷地に住んでいた高野家の妻。結婚式の日の夜、晴れ着姿で金襴緞子の帯を首にくくり、自殺。

『残穢』内では

「畳の上を擦るような音」
「着物の帯で首を吊った女性」
「ゴトンと言う音」
「ぶらんこ」
「蛇口越しに映る黒髪の女」

などの怪異として登場します。

ボス2(穢れ次鋒=怪異B):中村美佐緒

後に岡谷マンションや岡谷団地となる土地にあった長屋群に住んでいた住人。1952年に「灯油缶に赤ん坊を詰める」「畑から二人の嬰児の白骨死体」「死産の赤子を布にくるんで庭に放置」「押入れや天井裏にも一体」「長屋でも三人殺し、自宅の床に隠した」など、大量の嬰児殺しの罪で逮捕された。

『残穢』内では

「いないはずの赤ん坊の泣き声」
「壁から湧き出てくる赤ん坊」
「小さな赤い手形」
「ハイハイする音」

などの怪異として登場します。

ボス3(穢れ副将=怪異C):吉兼友三郎

岡谷団地ができる前、植竹金属工業の工場ができる前の土地に住んでいた吉兼家。友三郎は明治38年(1905年)に精神病を発病。「怨ミヲ云フ声」に焼け、殺せと命ぜられて、「家族に殴りかかる(暴力)」「家を放火しようとする(放火)」という凶行に走るようになったため、自宅の座敷牢に「私宅監置」されていた。座敷牢の床下の汚物槽に入り、床下を徘徊することを好んだ。

『残穢』内では

「床下を這い回るなにか」
「誰かが歩き回る音」
「耳元で「はぁっ」という低く重い男の溜息」
「汚物槽内にうずくまる人」

などの怪異として登場します。

ボス4(穢れ将軍=怪異D):奥山義宣+炭鉱夫

場所は変わって九州福岡の豪族、奥山家。奥山義宣は炭鉱の主で、明治末or大正初期に一家を皆殺しにしました。家族を殺害後、家を放火未遂。その後自殺。ここにさらに、炭鉱での大規模な事故による炭鉱夫の怨念がこもって、凶悪な怪異となりました。

『残穢』内では

「家族への暴力、殺人」
「家への放火」
「焼け、殺せという声」
「地下から響くうめき声」

などの怪異として登場します。

「穢れの連鎖=触穢(そくえ)」の考え方について

本作の重要な概念「穢れの連鎖=触穢(そくえ)」。

触穢とはざっくりいうと、悪いものに触れると伝染、感染していく、という考えです。

特に死による汚れは、「死穢」として重大視されました。ましてや不幸な死はもっと恐ろしい、というのが本作のカギになっています。

そして、穢れの連鎖の規定として、「延喜式」の「甲乙丙丁展転」というものが日本では古来より考えられてきたようです。ざっくり図解にしてみました。

恐ろしいのは、死穢によって、乙が死ぬことでさらなる汚染源が生まれて広がっていく可能性があるということです。

しかも、人だけでなく、物からも感染するということが本作では明らかになっています。九州の福岡で発生した、奥山家の怪異が強力な穢れとして全国に伝播していった。そしてその一端として、岡谷マンションの204号室に住んでいた久保さんが、部屋の怪異に遭遇して、作者に調査を頼んだ…ということです。

作者も久保さんも、最終的には穢れのあまりの広がりに絶句・絶望しますが、読者も同じ思いになり、薄ら寒い感覚を味わえると思います。絶対に「逃げられないな」と感じて。

つたないまとめで恐縮でしたが、本書を読んで底なしの絶望にぜひ浸っていただきたいと思います。最後に、印象的だった本文からの引用を添えます。

もしも無念の死が未来に影響を残すのだとしたら、それはいったいどれだけの期間なのだろう。無限なのだろうか。それとも有限なのだろうか。有限だとすれば、何年なのだろう。何十年ーーあるいは、何百年なのだろうか。

『残穢』小野不由美
文庫: 359ページ
出版社: 新潮社 (2015/7/29)

小野不由美『残穢』に合う推し曲

この日本的な恐怖を表現する曲は何かなと考えていましたが、Dir en greyの「かすみ」が結構ピッタリ来ると思いました。さらにPVで偶然にも「井戸の底」で歌っているのが…この曲ももしかしたら、すでに穢れているのかも知れません…

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小野不由美『残穢』の目次

一 端緒
二 今世紀
三 前世紀
四 高度成長期
五 戦後期Ⅰ
六 戦後期Ⅱ
七 戦前
八 明治大正期
九 残渣

小野不由美『残穢』の読了時ツイート

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