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有島武郎『或る女』感想|妖艶で魔性。早月葉子の激情の人生に心奪われる純文学の大傑作

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17冊目『或る女』有島武郎(おすすめ本4冊目)

こんにちは。書店に入るとトイレに行きたくなる派の右脳迷子(@unoumaigo)です。

今回は、twitterフォロワーのかしわもち@読書垢さん(@443434book)にご紹介いただいた1冊。

有島武郎さんの『或る女』をご紹介します。

自分では率先して手に取らなかったであろう時代の名作を教えていただき、本当にありがとうございました!

『或る女』有島武郎
文庫: 752ページ
出版社: 新潮社; 改版 (1995/5/16)

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目次

『或る女』の成分表示

『或る女』の成分表示をざっとしてみると、こんな感じです。もっと人間のドロドロした部分が渦巻いてますが。

『或る女』の感想

『或る女』の題名の印象はどこか匿名性のある、少しぼやけた感じなのですが、主人公の早月葉子の存在感とキャラクターの濃さはピカイチです。

本来であれば全く感情移入できないキャラですが、そこは巨匠・有島武郎の筆技。少し飛んだ感じの人なのかな?と思わせるようなスタートで惹き込み、徐々に毒々しさを発揮して目も当てられない状態になっている頃には、どうしようもない主役になぜか猛烈な同情心を抱いているはずです。

早月葉子はどんな女性かというと…

・容姿端麗、使う言葉も知的かつ女性的で魅力たっぷりです。

・女性の武器をフル活用して男を魅了します。

・何でも自分が優位に立たないと気が済みません。

・要するに「マウンティング」したがります。

・敵とみなした人には精神的揺さぶりをかけます。

・他の女性からも、敵視されることが結構あります。

・男性からは「美人で知的だ」と注目の的です。

・ただなんとなく男性からも「女性の武器を使ってるな」とは思われてます。

・でも美人だから許されてます。

・自分の欲しいものは、何でも手に入れたがります。

・割と女性の敵であり、男性からも一目置かれる強い女性です。

・取り巻きは多いけど、親友は少なそうな女帝タイプです。

・ただし、早月葉子のカッコよさは、全て自分の力でなんとかしようとする所です。自分の欲望に自己責任。実力ですべてもぎ取る意志と行動の力強さが凄まじいのです。

うまいごす
どうでしょうか?好きになれそうですか?でも全然心配いりません。

こんなアクの強い女性が主役ですが、バッチリ感情移入できることは保証します。

恋多き早月葉子の傍若無人なワガママに翻弄される周囲の男女達。

そして、その行動によって徐々に人生の道を踏み外していく早月葉子本人。

燃え上がる情念の炎に身も心も焦がされながら、それでも自分の太く短い一生を全うしようとする姿には、深い感慨を味わうことになるでしょう。

読者としても、終始葉子に振り回されっぱなしですが、痺れる読書体験になることを約束できます。

500ページ超えの大作なので軽くは読めませんが、純文学の大傑作だと僕は思います。

『或る女』の簡単なあらすじ

1分でわかる本当に本当に簡単な、色々ギュッとしたあらすじです。
この本の面白味は、卓越した文章と心理描写。そして、読者のそれぞれの登場人物の人生への感情移入なので、こんな簡単なあらすじでは魅力は語れませんが…

 

[box03 title=”『或る女』の超簡単なあらすじ”]

10代の時に、作家の木部孤笻と恋愛して、子ども(定子)もつくって結婚するも、離婚。

アメリカにいる実業家の木村貞一と結婚するために船旅へ。

船旅中、上流階級のおばさま・田川夫人との女の戦い勃発。

そこで出会った野生的な魅力あふれる船の事務長・倉地と恋に落ちる(倉地は妻子持ち)。

アメリカにいる木村に会ったけど、やっぱり倉地が好き!とそのまま日本に戻る。

日本に戻り、倉地との生活に満足する葉子。

だが、田川夫人の逆襲によって、居場所をなくし倉地ともどもピンチに。

心も体も病気になる葉子。そして倉地も葉子の元を離れていき…

[/box03]

 

超訳するとこんな感じです。特にラスト50ページの壮絶な葉子の描写には、下手なホラー顔負けの背筋も凍る狂気が描かれています

その地獄絵図たる有様も、読者は納得できることでしょう。

でも感情移入しちゃっているからこそ、気持ちが入りすぎてちょっと気持ち悪くなるかも知れません。

話の展開的には、冬のソナタ的な「そっち行ったらダメー!」ってところが読者には読めてしまう所もありますが、葉子は期待を裏切らず、ちゃんとそっちに行ってくれます。そんな直球なハラハラ感も楽しめると思います。

とにかく生々しい、勢いのある葉子の半生。

あえて本文からの抜粋はしませんが、ぜひ読んで感じていただきたい名作です!

『或る女』有島武郎
文庫: 752ページ
出版社: 新潮社; 改版 (1995/5/16)

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『或る女』に合う曲

僕の青春を彩る伝説のバンドでもある、BLANKEY JET CITYの「VIOLET FIZZ」という曲がとても合っている気がします。

冷静、情熱、紫炎、狂気、妖艶、脆弱で力強い光。曲に登場する人物はもっと不良少女っぽい感じだと思いますが、この危うい世界観はどこか共感いただけるのではないでしょうか。

アルバムだと、この曲の次にある「彼女は死んだ」という名曲と合わせて聞くと一段とグッとくると思いますよ。

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『或る女』の読了時ツイート

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