13冊目『すべて真夜中の恋人たち』川上未映子(おすすめ本3冊目)
こんにちは。目頭を押さえながら目薬をさすとべらぼうに染み渡る事を知って、毎日がちょっと楽しくなったうまいごす(@umaigos)です。
今回は、twitterフォロワーのあまめさん(@amain_yo)にご紹介いただいた1冊。
川上未映子さんの『すべて真夜中の恋人たち』をご紹介します。
おすすめいただき、ありがとうございました!また世界が広がりました。
『すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫)』川上未映子
文庫: 360ページ
出版社: 講談社 (2014/10/15)
『すべて真夜中の恋人たち』の成分表示
真夜中に飛び交う光。繊細で切ない、儚い光。
不器用な冬子が静かに少しずつ成長する姿。純粋で真摯な恋。そして…酒(笑)。
という感じです。
『すべて真夜中の恋人たち』について
川上未映子さんは、2008年『乳と卵』で芥川龍之介賞を受賞。『ヘヴン』や『わたくし率 イン 歯ー、または世界』『愛の夢とか』など、出す作品はどれもヒット。繊細かつ個性的な表現で、作品ごとに読み手を楽しませてくれる、変幻自在かつ秀逸な言葉づかいで人気です。今回はその中から繊細な要素をたっぷり詰め込んだ真っ向勝負の恋愛物語。
恋愛物語といっても、ど派手な演出があったり、誰もが嫌うヒール役の恋敵が登場するわけではありません。
現代の「消極的な恋愛のリアルさ」を浮き彫りにする数々の描写が繊細で切ない。でも、わずかでも少しずつ前に進もうとする主人公の存在が、感動を与えてくれる素敵な作品です。
『すべて真夜中の恋人たち』のあらすじ
人との会話が不得手で消極的なフリーの校閲者、入江冬子。
ふと足を運んだ新宿のカルチャーセンターで、偶然一人の男性、三束さんと出逢う。
日々を漫然と過ごしてきた冬子は、自分を取り巻く人生の登場人物「大手出版社の校閲局で働く石川聖」「聖を紹介してくれた元同僚の恭子さん」「同級生で仲の良かった早川典子」達のそれぞれの考え方に触れていく。
三束さんの優しさに次第に心惹かれていく、冬子の成長と恋の物語。
様々な箇所で、一歩踏み出せない冬子の姿。一般的に「暗い」部類に入る彼女を応援したくなります。その健気さには、随所でグッときてしまいます。
『すべて真夜中の恋人たち』のキーワードと注目箇所
光
冬子と三束さんを結ぶ、重要なキーワード。
作品内で、光は色々な形を取って登場します。
物理教師の三束さんは、冬子に光の本をプレゼントします。
光について勉強する冬子。夜に飛び交う街の光。それぞれの人生という光。
三束さんは言います。
「光に触れることはできるとも言えるが、本質的には消えてしまうので、触れることはできない」。
光の存在は、読後様々な感想を思い起こさせてくれます。
真夜中
冬子は、誕生日の夜に外を散歩することが好きです。
静謐な夜の世界。星の下で無心になり、やさしく呼吸をしながら歩を進める。それだけで、夜の鼓動にしとやかに包まれる。
引っ込み思案の冬子が、自由になれる瞬間。心がほどけるタイミングは、真夜中なのでしょうか。
登場人物の考え方
冬子をとりまく登場人物たち。それぞれが自分の人生を進み、冬子とは異なる自分の考え方を持っています。
本筋と脱線するような話でも、思わず共感してしまうものが多いのではないでしょうか。
個人的に、読後も妙に忘れられない言葉が2つあります。
石川聖
涙にしろ精液にしろ、たかだかティースプーン一杯か二杯くらいの量の液体と体から出すことが、なんでこんなに大変で、なんでこんなに重要なんだと思う?
早川典子
なんでこんな話したかわかる?入江くんが、もうわたしの人生の登場人物じゃないからなんだよ
“文字校正”にかけた遊び心
主人公の冬子が校閲者ということもあってか、文字の校正とかけた遊びゴコロが作中に登場します。
また、多くの漢字がやさしいひらがなになっています。読みやすいのはもちろん、それが不器用でたどたどしく、真摯な冬子の心象をうまく表現しているような気がします。
文字の形や比率を追うだけでも物語を楽しめる。そんな言葉のバランスの良さも魅力です。
切ないですが、あたたかく、希望にも満ちた作品です。
残り9,987冊/997冊!
『すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫)』川上未映子
文庫: 360ページ
出版社: 講談社 (2014/10/15)
『すべて真夜中の恋人たち』に合う曲
本作に登場する、ショパンの子守唄。公式曲はこちらになりますね。
私は、スピッツの「夜を駆ける」をぜひ推したいところです。冬子のイメージはもっとおとなしいですが、夜に自由になれる人間の、寓話的な素敵なイメージはピッタリだと思います。
『すべて真夜中の恋人たち』の読了時ツイート
おわりに:作品名を曖昧に変換
綾辻行人先生激推しミュージシャン「ずっと真夜中でいいのに。」風に。私も大好きです。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!