中原淳『残業学』感想|残業体質からの脱却へ。経営者層にこそ読んで欲しい!

9冊目『残業学』中原淳+パーソル総合研究所

こんにちは。右脳迷子(@unoumaigo)です。

先日、私のtwitterのフォロワーさんの属性一覧を見た所、てっきり「読書」や「本」が一位に来るかと思っていましたが、なんと一位は「犬(93%)」でした。そんなに皆さん、犬好きなんですね!

今回は、立教大学経営学部教授の中原淳さん+パーソル総合研究所『残業学』をご紹介します。

2万人規模の調査によるデータを元にした、

・「なぜ残業が起こるのか?」の考察
・「残業を減らすためにはどうしたらいいのか?」の提言

が明示される、働き方改革ってホントにできるの?という、日本で働く我々の痛い所をグリグリ突いてくる一冊です。心して読むべし。

『残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? (光文社新書)』中原淳
新書: 336ページ
出版社: 光文社 (2018/12/12)

残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? (光文社新書) [ 中原淳 ]

『残業学』って何?

中原淳さんが、日本の長時間労働という現象について、パーソル総合研究所とともに約2万人を対象に行なった大規模調査のデータを元にした、残業の実態と原因を紐解くプロジェクトです。

「希望の残業学」プロジェクトの詳細は下記のページでも見ることができます。

希望の残業学
https://rc.persol-group.co.jp/zangyo/

  • 残業の原因の根本を探る
  • 残業問題を解決して、よりよい労働環境へ!

という目的を掲げたプロジェクトです。そのプロジェクトの成果としての膨大なデータを読み解きながら、本音トーク炸裂の授業形式で読み進められる本になっています。

『残業学』からわかる残業の実態

本書をまとめるとこんな感じです。

[box03 title=”残業の原因”]・上司より先に帰れない
・残業代を稼がないと暮らしていけない
・部下の仕事を巻き取って、上司が残業せざるを得ない
・そもそも歴史的に日本は残業の文化でなりたってきた[/box03]

どれも皆さん心当たりがあるのではないでしょうか。

厄介なのは、日本は残業文化で成り立ってきたという経緯があるということです。

工業生産の時代には時間をかければかけた分だけ「利益」が上がったのです。

「仕事」に対応して人が雇われていないため、見つけようと思えば仕事を「無限」にでき、さらに仕事の「時間」にも制限がない、という世界にも稀な2つの無限を持っているのが日本の職場なのです

日本企業は景気が悪くなった時、人を切るのではなく労働時間を減らして対応していたのです。つまり、「景気が良いときは残業し、悪いときは残業をへらす」

海外は景気が悪くなるとすぐ解雇する、景気が良くなると雇用する、というスタイルが多い。日本は残業をうまく活用してきた歴史がある、ということなのです。しっくりきます。

そして、残業文化が長く続いてきた結果、下記のことが起こります。

残業が生む5つの恐怖「集中」「感染」「麻痺」「遺伝」「依存」

[box03 title=”残業が生む5つの恐怖”]・「集中」残業は仕事ができる人に集中する
・「感染」結果を出す残業インフルエンサーのせいで皆残業する
・「麻痺」超長時間労働をしているのに、幸福感を感じ始める
・「遺伝」かつて残業漬だった上司を持った部下も残業体質になる
・「依存」そもそも残業代が無いと暮らしていけない![/box03] [chat face=”unou2019.jpg” name=”残業マスター” align=”left” border=”none” bg=”red”]この5つ、ぱっと見で「わかるわかる」と思ったそこのあなた!やばいですよ。(自分もそうだけど…)[/say]

この中でも特に恐ろしいと思ったのは、「残業麻痺」

月80時間以上の超・長時間労働を行っている人は、他の人よりも「幸福感」が増してしまい、残業を自ら進めているというのです。

恐ろしい現象ですが、でもちょっと分かる気がします。私も残業が多い職場で働いていますが、

「それは仕事が楽しいから」

「自分のスキルに将来的になるから」

…と言っている社員さんが多い気がします。そして皆さんそれが正しいと思っているし、本当にちょっと、大変そうだけど楽しそうなんです。(自分もちょっとそう…かな…)

しかし、超長時間労働は、心臓、脳、精神疾患など、精神や健康へのリスクが高まるというデータがでているそうです。これはいけません。

さらに昔と違って、今は「定年という明確なゴール」は企業側も確約できない時代。ただがむしゃらにやるのとは、少し変えていく必要がありそうです。

残業代が無いと暮らしていけない「残業依存」も問題ですよね。

さぁ、ではどうやって残業を減らしていけばよいのか?

『残業学』に学ぶ、残業の減らし方

まず最初に、「中途半端な働き方改革は逆効果」だと言っています。

「ノー残業デー」や「オフィス消灯」、「残業時間上限の設定」など、各企業でさかんに働き方改革への取り組みがなされていますが、失敗することが多いそうです。

そりゃそうですよね。仕事が終わらないのに、いきなりバッサリ残業時間減らされたって終わらないもんは終わらないんですから。

そうすると、「もううまくいかないんだから残業させろ」とばっかりに、こんどは次の施策を打とうとしても言うことを聞かない、余計に残業をしたがる「改革ゾンビ」が続々と生まれてしまう。

じゃあどうすればよいか?その4ステップが下記だそうです。

[box03 title=”残業を減らす具体策”]1:残業時間を見える化する
2:経営陣がしっかりコミットメントする(本気でやると関わる)
3:1か月くらいで効果が薄れる「死の谷」をなんとしても超える
4:効果を見える化して、残業代を還元する[/box03]

生産性を高めるというのは容易ではありません。経営陣がしっかり「やるぞ!」とアピールして、意地でも実行するという気合が大事なんだと言うことです。

[chat face=”unou2019.jpg” name=”残業マスター” align=”left” border=”none” bg=”red”]社長!頼みますよ!(心の声)[/say]

働き方改革の本丸は「生産性が高い職場を生み出すこと」です。それは「人事の流行」だからではなく、「経営のために」やるべきことです

「何が大事なのか」×「職場がどうなっているのか」×「それらを職場でどうコミュニケーションするか」という掛け算で、「やるべきこと」と「やらないこと」を見極め、ジャッジする

「やらないこと」を決められるのは、「やるべきこと」が明確である時だけです。

多様でクリエイティブなもの、付加価値の高いサービスを提供することが「成果」とみなされる時代においては、いかに短い時間で価値のある仕事をやって利益をあげられるかを「成果」として定義するべきでしょう。

現場とともに、経営陣が本気で変わる、ということがキーワードになると思います。

感想:結局は「儲かるビジネスモデル」づくりが大事?

本書を読んで思ったことですが、これから人手がどんどん不足していく時代に、本来は生産性を高めることが先に目的としてある。

その結果として残業が減っていくのが正しい形なのだと思います。

しかし、現場社員が一丸となって生産性を高めるのはそれはそれで大事なのですが、そもそも残業を減らすことで効率が上がっても、それはどこかコストカットに似ているなと感じます。

コストカットの行き着く先の究極は、ゼロです。

給料も減るでしょうし、会社の利益も目減りしていきます。うーむ。

そうではなく、そもそもの事業やビジネスモデルが「儲かる体質」になっていかないと、未来は無いんじゃないかなと。

例えば「値上げ」「付加価値の高い商品の発売」など。これができるのって、社長や幹部などの経営陣です。

レストランのデニーズは、消費増税(5%⇒8%)の際に、メニューを全て一新。そして全体的に少し単価を上げたと聞きます。そういうことですよね。

[chat face=”unou2019.jpg” name=”残業マスター” align=”left” border=”none” bg=”red”]『残業学』を熟読すべきは、現場社員ではなく社長!貴方ですよ![/say]

この本が本当に日本の希望となる日を願っています。切に!!!

『残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? (光文社新書)』中原淳
新書: 336ページ
出版社: 光文社 (2018/12/12)

残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? (光文社新書) [ 中原淳 ]

残り9,991冊/998冊!

『残業学』に合う曲

これはもう、DREAMS COME TRUEの「朝がまた来る」ですね!

…間違ってます?

『残業学』の目次

はじめに

オリエンテーション ようこそ! 「残業学」講義へ

「働く人」=「長時間労働が可能な人」でいいのか
残業は「データ」で語るべき
ウザすぎる! 残業武勇伝
残業が個人にもたらすリスク
残業が企業にもたらすリスク
必要なのは、「経営のためにやる」という発想
なぜ、「希望」が必要なのか
大規模調査のデータ
コラム1 ここが違うよ! 昭和の残業と平成の残業

第1講 残業のメリットを貪りつくした日本社会
「日本の残業」はいつから始まったのか?
底なし残業の裏にある2つの「無限」
「残業文化」にはメリットがあった
第1講のまとめ

第2講 あなたの業界の「残業の実態」が見えてくる
1位が運輸、2位が建設、3位が情報通信
明らかになった「サービス残業」の実態
第2講のまとめ
コラム2 「日本人は勤勉」説は本当か?

第3講 残業麻痺――残業に「幸福」を感じる人たち
「月80時間以上残業する人」のリアルな生活
「残業=幸せ」ではないが……
「残業麻痺」と「燃え尽き症候群」
「幸福感」と「フロー」の関係
残業しても「見返り」が約束されない時代なのに
ただの「達成感」を「成長実感」にすりかえるな
「努力」を「成長」と結びつける日本人
「越境学習=職場外での学び」の機会の喪失
第3講のまとめ
コラム3 「男は育児より仕事」は本当か?

第4講 残業は、「集中」し、「感染」し、「遺伝」する
残業は「集中」する
「できる部下に仕事を割り振る」は悪いことか?
上司はつらいよ、課長はもっとつらいよ
残業は「感染」する
残業は「腹の探り合い」が 生み出す悲劇
仕事を振られるのが嫌だから「フェイク残業」する
「残業インフルエンサー」の闇
「集中」「感染」が起こりやすい職業
残業は「遺伝」する
必要なのは「学習棄却」
「集中」「感染」「麻痺」「遺伝」しやすい職種は?
第4講のまとめ

第5講 「残業代」がゼロでも生活できますか?
生活のための「残業代」
残業代を家計に組み込んでしまうと……
残業代が減ると、損をしたような気持ちになる
「生活給」という思想
上司の指示が曖昧だと、部下は残業代を当てにする
解き明かされた残業発生のメカニズム
日本全体で残業を「組織学習」してきた
第5講のまとめ

第6講 働き方改革は、なぜ「効かない」のか?
企業の「働き方改革」は本当に効果が出ているのか?
残業施策の失敗による職場のブラック化への道
段階1 残業のブラックボックス化
段階2 組織コンディションの悪化
段階3 施策の形骸化
施策失敗の「3つの落とし穴」
原因1 「施策のコピペ」の落とし穴
原因2 「鶴の一声」の落とし穴
原因3 「御触書モデル」の落とし穴
第6講のまとめ

第7講 鍵は、「見える化」と「残業代還元」
「外科手術」の4ステップ
ステップ1 残業時間を「見える化」する
ステップ2 「コミットメント」を高める
ステップ3 「死の谷」を乗り越える
ステップ4 効果を「見える化」し、残業代を「還元」する
第7講のまとめ

第8講 組織の生産性を根本から高める
「外科手術」の限界
マネジメントの変革編1 「罰ゲーム化」したマネジャーを救え!
マネジメントの変革編2 「希望のマネジメント」に必要な3つの力
マネジメントの変革編3 「やることはいくらでもある」わけがない
マネジメントの変革編4 部下への声かけは「2割増し」で
マネジメントの変革編5 「抱え込み上司」にならないために
組織ぐるみの改革編1 「残業の組織学習」を解除する「3つの透明性」
組織ぐるみの改革編2 重なりあう「マネジメント・トライアングル」
組織ぐるみの改革編3 「希望の組織開発」の鉄板フレーム
組織ぐるみの改革編4 組織開発を実際にやる際のコツ
組織ぐるみの改革編5 豊田通商を変えた「いきワク活動」
第8講のまとめ
コラム4 「やりっぱなし従業員調査」はなぜ生まれるのか
コラム5 会議のムダはどれだけあるのか?

最終講 働くあなたの人生に「希望」を
残業と日本の未来
「成果」の定義を変える――「努力+ 成果」から「時間あたり成果」へ
「成長」の定義を変える――「経験の量」から「経験の質」へ
「会社」の定義を変える――「ムラ」から「チーム」へ
「ライフ」の定義を変える――「仕事との対立」から「仕事との共栄」へ
平成が終わる今こそがチャンス
「残業学」を学んだあなたへ

おわりに
本書の調査概要

『残業学』の読了時ツイート

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です