6冊目『ぼぎわんが、来る』澤村伊智
今回は新進気鋭のホラー作家、澤村伊智さんのデビュー作『ぼぎわんが、来る』。
寒い季節をより凍てつかせる。でも読みだしたら止まらない、本格ホラー小説です。
小説なので特に不要なネタバレに気をつけて、アウトプットしていきます。
『ぼぎわんが、来る』の読了時ツイート
『ぼぎわんが、来る』の目次
第一章 訪問者
第二章 所有者
第三者 部外者
澤村伊智さん衝撃のデビュー作
2015年に小説家としてデビューした澤村伊智さん。そもそもは友人の書いた小説を批評しているときに、自分でも書いてみようと思ったのがきっかけだとか。
2015年に澤村電磁名義で応募した『ぼぎわん』がなんと第22回日本ホラー小説大賞を受賞。その年に同作を『ぼぎわんが、来る』と改題して小説家デビューされたそうです。
本作は、ミステリ&ホラーの巨匠綾辻行人さんも「文句なしに面白いホラーエンターテインメントである」と太鼓判を押しているだけあって、緻密な構成の中に様々な要素を盛り込み、しっかりスッキリ伏線も回収してくれるし、色々な楽しみ方ができる点でも素晴らしいと思います。
そして私は未見ですが、2018年に同作が『来る』のタイトルでなんと映画化までされています。小説を見終わったら、ぜひ映画も楽しみたいところですね。
まさに今注目の作家さんによる渾身・衝撃の作品です。
『ぼぎわんが、来る』はどんな作品か
SNSや核家族化の弊害などの現代的な要素と、国内外の民間伝承や怪談話などの定番的・古典的な要素がちょうど良くミックスされた、共感度の高い本格ホラー小説です。
本作で鍵を握るのキーワードは2つ。
1つは当然、表題でもある謎の化け物「ぼぎわん」と、もう1つは女性霊能者「比嘉姉妹」です。
本作は「比嘉姉妹シリーズ」の第1作であるということで、この位はネタバレになりませんよね。
物語の登場人物兼主要人物としてしっかりキャラ立ちしている比嘉姉妹。読んでいるうちにその謎の魅力に引き込まれてしまうはずです。
「本格ホラー」とした意味としては、「あり得ないんだけど、あるいはあり得ないと言い切れないかも知れない現実的な怖さ」がしっかり存在する作品だと思うのでこの表現を使っています。読みながら何度も背筋が凍る思いをしました。
正直、何回か思わず本を閉じてしまうほど怖かったです。特に中盤のアレはキツかった…
「ぼぎわん」の謎をめぐる現代の怪異譚
「ぼぎわん」って、一見何のことか分かります?私は分かりませんでした。想像もできなかった。でも読めばストンと腑に落ち、しっかり意味が分かります。
このあたりの絶妙なバランスが、非常にうまい。だから非現実世界なのに、現実的な怖さを引き入れても違和感なく読み進められるのかも知れません。
「ぼぎわん」とは何なのか?
そして「比嘉姉妹」とその周りの人物たちの心情を気にしながら読んでいただきたいと思います。
楽しむポイントは人それぞれだと思いますが、それを逆手に取って色々な箇所に深読みできたり、知識が投げ込まれているのであらゆる人が楽しめるようになっています。
そして、怖いポイントはしっかり怖い。絶望の描き方のバランスも卓越していると感じました。
澤村伊智さんの作品がもっと読みたくなる、見事な怪異譚です。ぜひ、ご一読ください。
『ぼぎわんが、来る』に合う曲
Nine Inch NailsのSomewhat Damagedです。切迫感と恐怖感を併せ持つこの一曲が個人的におすすめです。超名盤『The Fragile』の1曲目ですが、2枚組・約2時間あるので全編を聴きながら読んでも雰囲気でそうです。
おわりに:作品名を曖昧に変換
おもっきし怖がらせてやると意気揚々やって来たぼぎわんを取り越し苦労&涙目にし、ハッピーエンドにするべく曖昧化。
ぼぎわん「別の家いこ…」
「え、ここも留守?」
「ここも?」
「なんだよ…オレナンテドーセ…」
(突如ライトアップ&家族勢揃い)
皆「HAPPY BIRTHDAY🎉」
最後までお読み頂き、ありがとうございました!