45冊目『ベーシックインカム』井上真偽
舞台は近未来。体感的には2030年位。もしかしたらもっと早いかも。
技術の進歩した世界で起こる、5つの謎。というSFミステリ短編集ですが、個人的には本書がこの時代に刊行されたことには、一つの超重要な意義があると思います。
『ベーシックインカム』井上真偽
(集英社)
発売日:2019/10/4
ページ数:256ページ
井上真偽『ベーシックインカム』はこんな人にオススメ
- 小学校・中学校・高校の先生
- ミステリ好き
- 技術・トレンド好き
- 時代の変化・テクノロジーの急速な進化に不安を感じる人
- 人間の「情」を信じたい人
- これから、まだ何十年も生きる人
井上真偽『ベーシックインカム』の読みどころ
『ベーシックインカム』は21世紀の道徳の教科書になる
『ベーシックインカム』の魅力を一言で言います。
「ミステリの皮を被った、21世紀の道徳の教科書」
です。
もちろんSF・ミステリとしての作りも見事ですが、とにかく本書は、これからの時代を生きる人達へ向けた、「モラル・情や心・人の繋がり」の大切さを問うてくれます。
テクノロジーの進歩は諸刃の剣
- ロボットに仕事を奪われる。
- コンビニは無人になる。
- 食べ物は全てAIが調合した栄養食になる。
- 一生外出しなくても、ヘッドセットを付けてVRの中で幸せな夢を見ていられる…
これからの時代は、技術が劇的に進みます。人はその恩恵を受けられる世の中になっていきます。
その時 、その技術を悪用することだってできます。テクノロジーは使う人次第で諸刃の剣になる。
最近のメルカリやヤフオクでのマスクの転売騒ぎだってそうですよね。必要な人に行き渡らず、一部の転売屋が荒稼ぎをする。最近、法律で規制されるという流れになりましたが、それまでは法律的には罪ではなかった。でもその行為によって悲しむ人や苦しむ人が絶対にいるのです。
罪じゃなければ、何をやってもいいのか?
私は、そうは思いません。
人の行動を変えるのは、結局は本人次第
でもやはり、人の行動はその人次第です。親の教育が悪い、いや本人が悪い、いやいや政治が悪い…など色々議論も交わせるでしょうが、周りがやいのやいの言っても何も変わりません。本人がどう動くのか。それだけです。
なら、今の時代の道徳の教科書が必要ではないか。本書は、それになり得ると勝手に思っています。
本書は、5つのテーマを題材にしたミステリ短編集です。
- AI
- 遺伝子操作
- 人間強化
- VR
- ベーシックインカム
この言葉をみて「テクノロジーはちょっと…」と拒絶反応が出たあなた、大丈夫です。そんなに難しい話はありません。むしろ、そういう気持ちを持って本書を読み進めるのもいいかも知れません。
もし、小中高校の先生であれば、小学生には少し早いかも知れませんが、高学年以降であればわかるはず。ぜひ、ホントに道徳の教科書として使ってみてほしいです。
一話一話途中で止めて、登場人物はどんな気持ちなのか。どうすると良いのか。また、悪いのか。自分だったらどうするか。そんなことをディスカッションしながら読めば、これからの生き方のモラルが少しでも学べると思います。
これからますます激しくなる技術進歩の中で、どう生きるのか。
未来は、悲劇に支配されてしまうのか、はたまた幸福に満ちた世界なのか?
私は、後者を信じます。
『ベーシックインカム』井上真偽
(集英社 )
発売日:2019/10/4
ページ数:256ページ
井上真偽『ベーシックインカム』の目次
言の葉の子ら
存在しないゼロ
もう一度、君と
目に見えない愛情
ベーシックインカム
井上真偽『ベーシックインカム』の読了時ツイート
74冊目
井上真偽『ベーシックインカム』人間が持つ「情の世界」――。
遺伝子操作、AI、人間強化、VR…テクノロジーは進化する。世界はどう変わる?
期待と不安が入り交じる「未来」に提示された5つの謎。
人類は希望の未来へ歩み行く。この時代だからこそ読んでおきたい心打つSFミステリ!#読了 pic.twitter.com/etXgdRgr3T
— うまいごす@読書空間Z (@umaigos) December 8, 2019